目が不自由な女性の約8割が生理に関する悩みを抱えている―。埼玉県の民間団体が全国の視覚障害者を対象に行ったアンケートで、こうした実態が明らかになった。団体は「障害によって悩みが深刻化する女性がいる」と指摘する。
調査は2023年8~10月、一般社団法人「日本視覚障がい者美容協会」が行った。団体のホームページなどを通じて会員の女性ら約600人に質問票を送り、282人が回答した。
このうち約8割が、生理で不快・不便な思いをしたことがあると回答。内容(複数回答)は「(経血の)漏れに気付かず、下着や服を汚した」177人、「(経血による)服の汚れを周囲の人に指摘された」110人、「血が見えないので、生理の始まりと終わりが分からない」92人だった。
生理用品の購入では「時々」を含めて「困っている」との回答が6割を超えた。理由(複数回答)は「(生理用品の)パッケージの説明文が読めない」119人、「ナプキン以外の生理用品の使用方法が分からない」91人、「値段が見えない」と「生理用品の話は、店員やガイドヘルパーら周囲の人に相談しにくい」がいずれも89人だった。
あればいいと思う支援は、販売店の店員に視覚障害者への対応方法を知ってもらうことや相談窓口の増設の回答が多数。商品の特徴を音声で教えてくれるサービスの充実を求める声もあった。
協会の佐藤優子代表(43)は、知らない人から経血による服の汚れを指摘されたり、トイレでサニタリーボックス(汚物入れ)を探せなかったりした経験から、生理期間中は外出を避ける女性もいると話し「近年は生理を巡る話題をよく耳にするが、障害者の視点は忘れられがち。社会的配慮や情報提供の場が必要」と訴えた。
協会は、生理用品の勉強会を不定期で開いている。女性の健康に関わる悩みを技術で解決する「フェムテック」をテーマに東京都内で開いた勉強会には視覚障害者約10人が参加。膣(ちつ)内に入れて経血を受け止める月経ディスクや吸水ショーツなどを触りながら、使い方の説明に聞き入った。愛媛県東温市の松本葵さん(29)は「生理の話はオープンにしづらく、話を聞く機会を待ち望んでいた。生理の負担を減らす製品をたくさん教えてもらえて参考になった」。
日本性教育協会の理事を務める女子栄養大の遠藤伸子教授(学校保健学)は「ちょっとした知識や工夫で解決できるような悩みも多く、当事者への情報提供が不足しているのは明らか。特別支援学級で生理について教える機会を増やすなど、行政はこの声を教育現場や政策に反映させてほしい」と提言した。
(共同通信)