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災害廃棄物 重荷 置き場確保 難題 壊れた建物、解体も必要<能登半島地震>


災害廃棄物 重荷 置き場確保 難題 壊れた建物、解体も必要<能登半島地震> 石川県珠洲市で倒壊した家屋=6日午前8時46分
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 能登半島地震では、倒壊した家屋など、膨大な災害廃棄物が発生した。処理が滞り長期化すれば復旧、復興への足かせ、重荷になりかねない。専門家は仮置き場の確保や建物を解体する業者の人手不足など、対応の難しさを懸念する。

 広域処理

 「街が丸ごとつぶれたようなものだ。どう処理していくか、全く見えない」。石川県内の廃棄物処理業関係者は声を落とす。「立っている家がほとんどない」(泉谷満寿裕珠洲市長)ほどの状況に、県の担当者も「桁違いの廃棄量になるはず」と不安そうに話す。

 仮置き場を確保できるかが大きな課題となる。県は2016年に改訂した処理指針で、能登半島沖でマグニチュード7の地震が発生した場合、木くずやコンクリートなどのがれきの廃棄量を約9万2千トンと推計。仮置き場に必要な面積は約2万2千平方メートルと膨大だ。

 被害の全容はまだ分からず、十分な用地が確保できるかは未知数だ。仮設住宅などと用地の「奪い合い」になる恐れも。廃棄物を遠方へ搬出するにしても、能登半島の先という地理的な条件もあり対応は容易ではない。

 壊れた建物の解体も必要となる。京都大の牧紀男教授(防災学)は「解体を迅速に進められるかが、スムーズな復旧、復興の鍵を握る。しかし、大阪・関西万博の準備でも指摘されるように、業界の人手不足は深刻だ」と強調する。

 桁違い

 環境省によると、過去の災害では、住民が独自に廃棄物の置き場を作ったり路上に放置したりしたことで、車や人の移動が阻まれた事例もある。分別が不十分で可燃物とガスボンベが混在するなどし、火災につながったこともあったという。

 同省は自治体を支援するため、専門職員を派遣。ボランティアや民間事業者とも連携し、態勢整備を急いでいる。財務省も、未利用の国有地をがれき置き場などのために提供する構えだ。

 これまで、南海トラフ巨大地震を想定し、都道府県境を越えた廃棄物処理の連携が模索されてきたが、まだ道半ばだ。千葉大の丸山喜久教授(地震防災学)は「災害廃棄物が片付かない間は住民も復興を感じられない。廃棄物を広域処理する仕組みづくりを急ぐべきだ」と訴えた。

(共同通信)