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海自護衛艦が中国領海航行 「深刻な懸念」伝達受ける 政府関係者 法的問題否定


海自護衛艦が中国領海航行 「深刻な懸念」伝達受ける 政府関係者 法的問題否定 中国海軍創設70周年の国際観艦式に参加するため、山東省青島に到着した海上自衛隊の護衛艦「すずつき」=2019年4月
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信社

 【北京共同】海上自衛隊の護衛艦「すずつき」が今月4日、中国浙江省沖の中国領海を一時航行したことが10日分かった。自衛隊の艦船が中国領海を航行するのは極めて異例。中国側から退去勧告を受けていたという。周辺では中国軍の実弾射撃訓練が予告されていた。中国政府は日本側に深刻な懸念を伝達。日本政府は経緯を調べると外交・防衛ルートで伝えた。防衛省は艦長に聞き取りを実施するなど調査を始めた。外交筋が明らかにした。

 国連海洋法条約では沿岸国の安全を害する行為を行わない限り、領海を航行できる「無害通航権」が認められている。すずつきの航行も国際法違反に当たらない可能性が高いとみられる。意図的な航行かどうかは不明。日本政府関係者は「少なくとも法的問題はない」としている。

 防衛省は取材に「自衛隊の運用に関する事柄なので、答えを差し控える」とコメントした。

 中国政府は海自艦による「意図的な挑発」(中国筋)の可能性も否定できないとして内部で詳しく情報収集・分析を進めている。中国外交筋は「領海に入る外国軍艦に事前の許可を求める中国の国内法に抵触している」と批判している。中国は鹿児島県沖や尖閣諸島周辺で海軍や海警局の艦船による日本領海への侵入を繰り返している。

 すずつきは中国側の軍事訓練を公海上から警戒監視する任務を担っていたという。浙江省沿岸から12カイリ(約22キロ)の領海に接近したため、中国側艦船から繰り返し退去勧告を受けたものの、速度を上げて領海を航行した。約20分間にわたり航行し、領海外側に出た。

 すずつきは東シナ海に展開する中国海軍の空母「遼寧」に対する警戒監視活動も実施してきた。

 2019年には中国山東省青島で開かれた国際観艦式に参加した。


エスカレートさせてならぬ

 明治学院大の鶴田順准教授(国際法)の話 国際法上、船舶は領海の沿岸国の秩序や安全を害さない限り領海を通航できる「無害通航権」を有する。ただ、無害通航権が商船のみでなく軍艦にも認められるかについてはかねて議論があり、1982年に採択された国連海洋法条約でも明確な形で決着がついたとは言えない。

 日本は自国領海での外国軍艦の無害通航を認めているが、中国は外国軍艦の通航に際して事前の許可を求めている。日本が中国の無害通航の解釈・運用を認めるわけにはいかないため、自衛隊艦船が中国領海を航行する際に許可を求めるとは考えにくい。自衛隊艦船が中国領海を航行する意図は判然としない。アジアの海ではさまざまな問題が起きているが、日本の活動によって事態をエスカレートさせるようなことはあってはならない。

(共同通信)