琉球大大学院医学研究科の研究グループは5月30日、西原町の同大で会見を開き、玄米特有で高濃度に含まれる成分「γ(ガンマ)―オリザノール」が、加齢による認知機能低下の予防や改善に効果があるとする研究結果を発表した。ヒトへの臨床試験はこれからだが、将来的には認知症の予防や認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の改善につなげられる可能性があるという。研究グループはこの成果により、1月24日に特許を取得している。
MCIの発症予防実験では、人間の50歳代後半の男性に相当する中年マウスに(1)通常食(2)ラードを主とする高脂肪食(3)γーオリザノールを含む高脂肪食―を4カ月間与えた後、迷路試験を実施した。その結果、高脂肪食のマウスは通常食のマウスより空間作業記憶率が約20%低下した。一方、γ―オリザノールを含む高脂肪食のマウスは空間作業記憶率が改善し、通常食のレベルまで回復した。
![](https://ryukyushimpo.jp/tachyon/2024/06/2-15.jpg)
また記憶をつかさどる「海馬」を脳から取り出して調べたところ、γ―オリザノールを含む高脂肪食のマウスは認知機能の低下を示す神経の炎症が抑えられていた。さらに新たな脳神経細胞が生まれていることも分かった。
MCIの治療実験では医薬品や健康食品を製造販売する「SENTAN Pharma(センタンファーマ)」(福岡市、永井朋子社長)との共同研究を実施し、同社のナノ粒子化技術を応用した。肥満させてMCIを発症したマウスに、体に吸収されやすいナノ粒子化γ―オリザノールを経口投与すると、3カ月で認知機能が改善した。
研究グループらはこの成果を元にサプリメントの開発にも成功しており、今後は手軽な方法で認知症の予防やMCIの改善に役立てられる可能性がある。
同大大学院医学研究科の岡本士毅助教は「認知機能の低下を予防・改善することは健康寿命改善の要になると考えられる。毎日食べる食品由来の成分で対策を講じられるのは有用だと思う」と研究の意義を説明した。
(嶋岡すみれ)