柔道・阿部阿部一二三、強さ新境地<パリ五輪>


柔道・阿部阿部一二三、強さ新境地<パリ五輪> 男子66キロ級決勝 ブラジル選手(上)に合わせ技で一本勝ちする阿部一二三=パリ
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 パリ五輪第3日(28日)柔道男子66キロ級で阿部一二三が決勝でリマ(ブラジル)に一本勝ちし、2大会連続で金メダルを獲得した。。女子52キロ級で妹の阿部詩(ともにパーク24)との2大会連続の兄妹優勝はならなかった。

 日本男子の2連覇は73キロ級の大野将平以来で5人目。同級日本勢は6大会連続表彰台となった。

 女子52キロ級で前回覇者の阿部詩(パーク24)は2回戦で敗退し、阿部一との兄妹2連覇を逃した。阿部詩を破ったケルディヨロワが柔道でウズベキスタン勢初の優勝を果たした。

 29日は、男子73キロ級で32歳の橋本壮市(パーク24)が準々決勝でガバ(フランス)に延長の末に指導3の反則負けで敗者復活戦に回った。女子57キロ級の舟久保遥香(三井住友海上)は準々決勝で東京五輪銀メダルのシシケ(フランス)に一本負け。敗者復活戦を制し、3位決定戦に進んだ。

豪快で自在、成長詰まった闘い自賛

 東京五輪後の成長が詰まった4試合だった。柔道男子66キロ級の阿部一は、豪快かつ慎重に勝利を積み上げた。一本を狙う強気な姿勢を貫きつつ、戦況に応じた対応力も抜群。「五輪の舞台で練習してきたことを出せたのは、これからの自信になる」と自賛した。

 得意の担ぎ技と、この3年間で磨いた足技の連係が、とにかく効果的だった。どよめきを誘ったのはビエル(モルドバ)との準決勝。延長戦で袖釣り込み腰のフェイントから脚を刈って勝利。驚異的な切り返しで、世界ランキング1位の実力者をぼうぜんとさせた。

 エモマリ(タジキスタン)との準々決勝では最大の危機が訪れた。接触で鼻から出血し、治療のため試合を2度中断。規定では3度目で棄権による敗戦となる窮地にも「相手は組み手が雑になり、前に出てきていた。勝負どころだ」と冷静に判断する。再開直後、前進してきたところに大内刈りを合わせ、ねじ伏せた。

 出稽古先の一つである国学院大の坂本大記監督によると、阿部一は日頃から実戦形式を重視。残り時間を3分、2分、1分と細かく状況を設定して乱取りをする。同監督は「それが、そのまま試合に出ている」と勝負強さの秘訣(ひけつ)を語る。練習後は打ち込みや投げ込みによる技の確認を欠かさず「ほつれた糸を必ず直して帰る」と細部へのこだわりにも感心した。

 26歳の王者は「練習をどんなにこなしても不安は消えず、強くなっているかな、大丈夫かと思っていた」との心境でパリ五輪に挑んだことを明かした。自分の弱さと向き合い、妥協しない。その姿勢が偉業達成へとつながった。


▽男子66キロ級準決勝
阿部一二三(パーク24) 優勢延長4分9秒 ビエル(モルドバ)
▽同決勝
阿部一二三(パーク24) 合わせ技2分36秒 リマ(ブラジル)

 (共同=村形勘樹)