聞く。読む。書く。取材で日々、言葉と向き合う。適した表現が見つからない時は脳内で言葉探しの旅が始まる。年齢、経験、立場、取り巻く環境で人それぞれ話す内容が変わる。逃げ、ごまかし、うそくささ、時にそんな言葉もある。一方で、意外、率直、初耳な言葉は耳に残る。ペンが走る。
11月23日。石垣市内であった軍備増強に反対する市民集会。住民の一人として上原政一(まさかず)さん(72)がスピーチした。「正直な花を咲かせましょう。私は戦争に協力できません」。第一声がどういう意味か分からなかった。だけどもなんだか心に残った。
翌日。上原さんに言葉の意図を聞きに行った。軍拡を進める政府への「怒り」と「うそつきな政治家に投票しないで」との思いを込めたそうだ。「きれいな花にはトゲがあるって言うさ」。笑って、花に例えた理由を教えてくれた。スピーチでは他にも反戦の思いを自分の言葉に乗せて訴えていた。戦争になると「ハブとモグラと一緒に寝る日も近いかも」。農業をしている自身に引き付け、生活に根差した上原さんの言葉は力強かった。
対照的に連日、裏金疑惑が報道されている政治家はみな、誰かが決めたような言葉を並べる。自分の言葉で思いを伝える上原さんの話をもっともっと聞きたい。
(石垣市、竹富町、与那国町担当)
私が書きました
照屋 大哲
(石垣市、竹富町、与那国町担当)