富盛は八重瀬町の中央部に位置し、西に八重瀬岳を抱える。伝統文化が色濃く残る地域だ。
集落最大の行事である旧暦8月の十五夜祭りは、中国風の衣装で練り歩く「唐人行列」、和装でちょうちんなどを持って歩く「大和人行列」や「女行列」で知られる。行列は県内でも珍しい民俗芸能として、町無形民俗文化財に認定されている。
300年以上の歴史がある唐人行列は、琉球王朝時代、中国から訪れた人々が住んだ那覇の久米村から伝わったとされる。
棒術や組踊も盛んで、伝統を継承しようと区民は1989年に富盛伝統芸能保存会を結成し、若手を育成している。今年の十五夜祭りでは21年ぶりに組踊「伏山(ふしやま)敵討」を上演した。
野原泰区長(62)は「十五夜祭りで使う旗頭に記された『和衷協力』は心一つに協力することを意味する。富盛は昔から団結が強い。今後も多くの区民に参加してもらい、十五夜祭りを継承したい」と話した。
野原泰区長から一言 公民館は区民の活動拠点。さまざまな人に訪れてもらい、コミュニケーションを深めたい。
富盛区のメモ 2023年10月末現在、674世帯1753人が住む。県内最古の石獅子で沖縄戦の戦火をくぐり抜けた「富盛の石獅子」が有名だ。
(岩切美穂)