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沖縄産バナナを全国へ 有機栽培で「えぐみ」少なく 読谷 土づくりもこだわり


沖縄産バナナを全国へ 有機栽培で「えぐみ」少なく 読谷 土づくりもこだわり 収穫されたバナナ。国産オーガニックバナナとして関東圏へ出荷される=14日、読谷村のグレイスファーム
この記事を書いた人 Avatar photo 金盛 文香

 【読谷】村波平で有機栽培に取り組むグレイスファーム(比嘉博美代表)と発酵技術開発などを手がける村儀間のアクト(藤原澄久CEO)は2023年から、共同でバナナ栽培を開始した。県産バナナの生産量を増やすことで、輸入依存度が高いバナナの自給率を高めようと挑戦している。有機栽培にもこだわり「品質も良く、安心安全なバナナが栽培できることを知ってほしい」とバナナ栽培や手法の普及を目指す。

 グレイスファームは3年前からバナナ栽培を開始した。高温多湿な気候はバナナ栽培に向いており、年中収穫が可能だ。同農場の比嘉吉廣さんは、農家にとっても「安定した収入を得られる」と話す。

 アクトの藤原さんによると、バナナは国内で人気の高い果物だが、流通するバナナのほとんどは輸入に頼っている現状だ。輸送の際の殺菌処理などのため、殺菌剤不使用のバナナはゼロに近い。

 輸入バナナに比べると、県内産は輸送コストが削減でき、安全性も確保できるというメリットがある。県内で大規模産地化すれば、国内需要の一部を賄え、自給率の向上につながる。

県産バナナの普及を目指す比嘉吉廣さん(右)と藤原澄久さん=17日、読谷村のグレイスファーム

 グレイスファームでは現在、週に150キロほどを生産しており、夏に向けてさらに増える見込み。今後、栽培面積を増やしていく予定だ。「有機JAS」の認定も取得し、国産オーガニックバナナとして、関東圏へ出荷している。

 アクトは森林生態系を支えている「菌根菌」を活用した農業技術を持つ。菌根菌を農地にまき、植物自生地の生態系を農地に再現することで、温室効果ガス排出を最小化し、化学肥料や農薬に依存しない農業を可能にした。同社の農業技術を広めることで、地球温暖化の改善や肥料自給率の向上なども見据えている。

 菌根菌を使用して栽培した農産物はえぐみが少ない味わいが特徴で、同社は「清麗」という名前でブランド化している。グレイスファームのバナナも、今後「清麗」ブランドの「心バナナ」という商品名で売り出す予定だ。土づくりにこだわり有機栽培を実現してきた比嘉さんは「藤原さんが裏付けてくれた」と共同に心強さを感じている。

 担い手が減少している農業。従事する人の中にも「農業に対する諦め感がある」と藤原さんは指摘する。しかし、グレイスファームから実績を積めば「他の若い人たちもやっていける」と比嘉さんは継承に期待を寄せる。藤原さんは「まずは沖縄で質のよいバナナが作れることを知ってほしい」と呼びかける。比嘉さんも「グレイスファームのやり方を見てもらい、一緒に広げてほしい」と意欲を見せた。

(金盛文香)