表彰台の真ん中狙う49歳ベテランレーサー スピード向上へ貪欲 陸上車いすT52上与那原寛和<憧憬の舞台へ>


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心拍機能を高めるため、黙々と車輪を回す上与那原寛和=9日、うるま市内(新里圭蔵撮影)

 車いすT52の400メートルと1500メートルで東京パラリンピックの代表に内定している上与那原寛和(49)=SMBC日興證券=は、スピードの向上に余念がない。過去3大会のトラックで毎回入賞の第一人者は「心拍系の練習を重視している」と自らを追い込み、貪欲にさらなるスピードアップを目指す。新型コロナの流行が終息する見通しが立たない中で「何が起こるか分からない」と現状を見詰めるが、49歳のベテランレーサーがぶれることはない。「準備をしていくしかない」と黙々と車輪を回す。

 9日午前9時ごろ、うるま市勝連南風原の肝高公園。競技用の赤いレーサーに乗ると、穏やかだった表情がぐっと引き締まった。停止状態から一気に最高速度まで上げ、速さを保つ。ロードに出て、戻ってきた上与那原は乱れた呼吸を整えながら「これをやらないと戦えない」と自身に言い聞かせるように説明した。

 想定するのは得意とする1500メートル。「展開次第では速度の上げ下げも出てくるので、心拍の強さとスピードが必要」と対応力を磨く。「力加減は右が100%なら、左は90%台」と、左右の腕でまひの度合いに差がある。トラックでの練習では通常の左回りを右回りに走って左腕に負担をかけることで「左の力も少しずつ上がってきている」と、走りの滑らかさに直結するバランスは向上している。

 ライバルは銀メダルを獲得した昨年の世界選手権1500メートルで表彰台の真ん中を譲った佐藤友祈だ。スタートでは自身に分があるが「彼はパワーがあるので、のってくると速い。それをいかに逃がさずに捉えるかがポイント」と展望する。昨年11月の大分マラソンでは佐藤と最後のトラック勝負になり「いつも離されていたけど、今回は離されなかった」と進化を実感している。東京パラでは「接戦になると思う。最後に勝負したい」とレース展開を思い描く。

 コロナ禍の影響で2、3月の大会出場を見送り、4月のジャパンパラに照準を合わせる。400メートル、1500メートルとも「自己ベストが出るのは間違いない」と自信をみなぎらせる。その次は東京パラ本番だ。「自分の力を確認できるチャンスは一回だけ。全力でいく」と一レースごとに全身全霊を注ぐ。

 東京パラの目標は「400メートルは入賞、1500メートルは確実に表彰台。真ん中を狙いたい」。肉体強化に4大会連続の出場の経験値を掛け合わせ、初の金へひた走る。

(長嶺真輝)