21日投開票の那覇市長選に向けた公開討論会(那覇青年会議所主催)が3日夜、那覇市の琉球新報ホールで開かれた。無所属現職の城間幹子氏(67)と無所属新人で前県議の翁長政俊氏(69)=自民、公明、維新、希望推薦=が出席し、子育て支援策や経済振興策を巡って論戦を交わした。司会は那覇青年会議所の宮城匡理事長が務めた。
(’18那覇市長選取材班)
【基本姿勢】
城間幹子氏/協働のまちづくり浸透
「平和・こども・未来『ひと つなぐ まち』」という言葉をキャッチフレーズに務めてきた。諸課題に対して持てる力を全て注ぎ、風格ある県都那覇市としてさらなる高みを目指し、発展に尽くしたい。市の羅針盤として第5次那覇市総合計画を策定した。策定に携わる中で、ますます那覇市の発展に尽くしたいという思いが強くなった。「協働のまちづくり」の意識が、4年間で目に見えて浸透してきたと手応えを感じている。
総合計画の期間中に市政の100周年を迎える。先達が築いた那覇の風格を守り、次の100年に向けた礎を築くことが求められる。未来への確かな一歩を踏み出すため、計画に掲げた施策に全力で取り組む。
市民に掲げた公約の着手率は96%になった。100点満点ではないが、合格点を頂けると思う。生活困窮世帯の子どもたちに夢をつなぐこと、生活の向上に直結する施策、LGBTを含む性的マイノリティーへの理解の促進、待機児童の解消、高齢者の支援、経済振興など、きめ細やかな側面に施策の重心をシフトしている。市民と手をつないで絆を縦横無尽につなぎながら、市民目線の政治、行政をしていきたい。
翁長政俊氏/市民サービスを第一に
念頭に置いたことは市役所は市民への最大のサービス産業であるべきだという点だ。城間市政を検証、総括する中で分かったことは、市民サービスが著しく劣化しているという事実だ。子育て世代が近隣の市町村に移り住むという現象があると聞いている。そういう状況を打開したい。
子育て支援の遅れがある。給食費を2年前に値上げした。他の市町村では低減化や無償化が行われている。子どもの医療費無償化が那覇市は6歳未満までだ。他の市町村は中学3年まで実施されているところもあり、格差がある。妊婦歯科検診や2歳児の歯科検診なども廃止した。がんの検診も有料化が始まった。公園の遊具が111カ所老朽化している。安心安全な公園と言える状況ではなく、それを放置している。特別養護老人ホームの整備計画の目標を引き下げた。
消防職員は定数の8割しか充足していない。救急隊は10隊必要だが、6隊しかないのが現状だ。学校校舎の耐震化も県内で最悪で45棟が放置されている。那覇軍港の移設について、協議会に現市長は消極的な感じもする。現状を改革していきたいという思いで立候補を決意した。
【教育・福祉】
城間氏/保育無料化を推進
待機児童解消に向けて認可保育所などの数を2014年の2倍に拡充し、定員も1万1405人に増加した。兄弟姉妹を同じ保育所に預けることができるなど、本当の意味の待機児童ゼロを目指す。保育士の確保に向け、市独自で、潜在保育士がフルタイムで就職した場合、10万円を給付する事業を実施している。
幼児教育を無償化し、県と連携して保育料の無料化を推進していく。子どもの医療費は現物給付方式による無償化を中学3年生まで拡充する。放課後の子どもの居場所づくりとして児童クラブを拡充した。利用料も軽減している。
子どもの居場所事業は内閣府からも評価され、子どもの貧困緊急対策事業の制度設計に生かされた。全ての子どもたちが健全に育ち、未来に向かって歩けるよう、地域の方々と一緒に、子どもたちとの絆を紡ぎ全力で取り組む。
翁長氏/教育クーポン導入
子どもの給食費、医療費無償化を実現する。現在給食費は小学生で年間5万4千円、中学生が年間で6万円だ。無償化で家計の負担軽減が可能だと思う。医療費は中学3年まで無償化する。待機児童もゼロに向けて頑張る。保育士の処遇改善、児童クラブの利用料の負担も軽減する。
教育クーポン券を導入したい。塾や文化事業、スポーツ教室などに支払うことができ、家計に優しい政策だと思う。給付型奨学金制度も拡大する。海外留学や就職、就職活動、資格取得などキャリアアップ支援も頑張っていきたい。
文化財保護と歴史建造物の復元に力を発揮したい。新たに博物館を造って常設展示をしたい。琉球の歴史や文化の深みを出す意味でも歴史的建造物の復元は、どうしても必要だ。教育の場として活用でき、観光資源にもなる。首里文化の深みをつくっていきたい。
【経済・振興】
城間氏/中小事業者を支援
那覇市の持つ成長可能性を着実な経済成長につなげるべく、経済振興政策を市政の重要な柱に位置付け、各種施策を展開してきた。施策の展開によって、市の税収は市長に就任した4年前と比較して39億6658万円増え、伸び率は109%となった。
地域に企業誘致を推進する誘致活動サポート事業では2017年度の実績が28社となった。雇用拡大と産業振興を目的に新規創業した企業に対して助成金を交付する企業誘致促進奨励助成事業の交付実績は123社となっている。昨年から実施している新商品の開発事業などに頑張っている。
一方、県民所得は全国最下位だ。経済格差、若者の離職率や、雇用のミスマッチ、女性の就業環境整備、非正規雇用率の高さ、人材不足など多くの課題が挙げられる。中小企業、小規模事業者の振興発展への施策などに継続的に取り組む。
翁長氏/交通渋滞解消へ力
那覇市の交通渋滞は全国で最悪だが、4年間で目に見えた対策は城間市政では行われていない。通勤や通学に支障を来し、物資の輸送や観光客の移動に深刻な影響が出ている。
モノレールを2両編成から3~4両編成にし、環状線も必要となる。鉄軌道整備も実現したい。真和志地域などでは、無料コミュニティーバス、乗り合いタクシーを実現したい。
那覇軍港から那覇港湾の海浜エリアは那覇市にとって絶好の一等地だ。物流や産業の拠点につくり変え、観光の目玉をつくる必要がある。那覇空港の新ターミナルの実現は、率先して力を発揮していきたい。第2クルーズ船バースは出発港として(機能を)整備したい。
那覇市を国際観光文化都市に指定させたい。国庫からの予算をハード事業やソフト事業も含めて十分に活用し、那覇市を国際観光文化都市として整備したいと強く思っている。
【クロス討論】
軍港の行方は/城間氏 移設協議会で決定
翁長 政治決着させない以上、那覇軍港移設は厳しいと思うが。
城間 これまで24回にわたり、移設に向けた協議が行われている。2015年4月の第23回那覇港湾施設移設に関する協議会で、浦添市が計画を持ち帰って議論しており、移設協議会での協議には乗っていない状況だ。ボールは今、浦添市が持っている。三者会談は非公式に決定する場でないことを確約して、翁長雄志氏と(浦添市長と)2回ほど話させていただいた。私はこれまでのスタンスを堅持していきたいと思っている。移設協議会で決定されるべきであるという基本的な考えを今のところ持っている。
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市民会館の見直しは/翁長氏 市長になれば対応
城間 新文化芸術発信拠点施設(市民会館)の見直しをどうするのか。
翁長 本来であれば、あの地域に市民会館をつくることは交通大渋滞を招く恐れがあるため、疑問に感じている。しかし、城間市長が市長選挙の後に発注していただけるのであれば、対応することが可能だったが、市長はすでに一部の発注を議会に提案している。議会が4日に議決する動きになっているので、議会で可決されたものについて、私が言及することは非常に難しくなる。工事の受注者が出てきて、言及すると問題が出てくる。この選挙が終わった後に、私に委ねることになれば対応していきたい。
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給食無償化の財源は/翁長氏 集中と選択で配分
城間 給食費の無償化などにかかる予算、財源確保策は。
翁長 那覇市は一般会計で1500億円の予算がある。給食費の無償化は18億円、医療費無料化は6億円程度の予算が必要となる。一括交付金を使える予算もあるが、使えない予算もある。そのため、国にある数々の制度、メニューをもう一度精査し、引っ張れる予算は、国の予算を使う。一般財源で手当てしている事業を組み替え、予算執行していくことも可能だ。子育てなどの予算は市長が判断して集中と選択ということで、しっかりと予算を配分していけば解決できる課題だ。城間市長はその選択をしなかっただけだ。
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一括交付金使い切れていない/城間氏 必要な時 有効活用
翁長 一括交付金が30億円に減っている。なぜ使い切れないのか疑問だ。
城間 一括交付金は国の予算編成の中で決定される。確実な予算措置に向けて、県と県内市町村が一丸となって要請している。市への配分額については有効に活用している。教育、文化、福祉など、手厚い対応が求められるソフト部門を重要視し20億円を活用している。一部はハード部門の事業に使っているが、大型事業の有無や進捗(しんちょく)状況に左右され、毎年一定ではない。有効に活用できるよう県と相談しながら進めてきた。あるから使うということではなく、有効に使う。必要なときに必要な使い方をするという姿勢だ。
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消防隊員充実どうする/城間氏 計画に沿って整備
翁長 消防隊員の充足率が80%。救急隊員は10隊必要だが6隊しかない。
城間 現状としては100%ではない。認識の擦り合わせが必要だと思うが、消防力整備計画に沿って現在、那覇市は進めている。2018年度、神原分署で(全体で)7隊目となる増隊をした。小禄支所の建て替えもある。建て替えに合わせて小禄南出張所を建設する際、8隊目を増隊することになっている。仮称だが識名トンネル付近に識名出張所(整備)を予定している。その際も増隊を予定している。公約に私も消防隊員を増員することを掲げている。順次計画に沿って、整備する方向に向かっている。
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学力向上施策は/翁長氏 行政主導 制度充実
城間 学力向上に力を入れ、小学校で正答率が全国平均を上回った。
翁長 子どもたちの学力が県内で問題となっている。子どもたちの学力を上げることは市政を担当する以上やっていかないといけないし、学校現場を充実させる教育の改革や、サポートする人の手当も必要になってくると思う。教育クーポンを使って、子どもたちの塾の授業料として支払う。そういった制度を充実させていけば、さらに子どもたちの学力は十分上がっていく。那覇市の子どもたちが未来に向かって羽ばたいていくためにも、教育の充実は、行政が主導しながら、頑張っていきたいと強く思っている。
【立候補予定者PR】
城間氏/風格ある県都に
琉球王国の王都であり、大交易時代にアジアの国際交流拠点として役割を担ってきた歴史がある。政治、経済、文化、教育、行政のあらゆる分野で県の中心的役割を担っている。唯一の中核市として、県内自治体をリードするフロントランナーとしての役割、リーダーシップも求められる。
先人が守ってきた那覇市の風格にさらに厚みを加えながら県都の新たな礎を築かなければならない。協働によるまちづくりを軸としてさらなる高みへと押し上げ、子どもたちに明るい未来を示せると信じている。
優しく暖かく、細やかな、心を開いて未来を開くという信念で、風格ある県都那覇にするため、未来につなぐまちづくりに市民と共に歩んでいきたい。
翁長氏/政策実現力 駆使
30年近い政治キャリアを積んできた。多くの皆さんと議論し、たくさんのことを学んだ。人脈をしっかり生かしたい。政策の実現力は城間氏より勝っていると自負している。政策実現力や推進力を那覇市民のために使いたい。
市民生活をいかに向上させ、市民がより幸せ感を共有できる社会をどうつくるのか。今、支援を必要とする市民に確実に支援ができる政策を確約したい。経済力はまだまだ伸び率がある。那覇市の経済をよくしていくことは県の経済をよくすることにつながる。那覇市が県、市町村をリードする形で、新たな高みに押し上げたい。近く政策発表をする。市長選の意義や重要性をぜひ理解していただけるようお願いしたい。