21日投開票の那覇市長選に向け、琉球新報社は10日、那覇市泉崎の同社で市長選の立候補予定者を招いた座談会を開いた。無所属現職の城間幹子氏(67)と、無所属新人で前県議の翁長政俊氏(69)=自民、公明、維新、希望推薦=が出席し、子育て支援策や経済振興策、新たな那覇市のまちづくりについて、独自の政策を打ち出した。
クロス討論では互いに政策の疑問などを指摘し、論戦を交わした。司会は小那覇安剛社会部長が務めた。座談会の内容を紹介する。(’18那覇市長選取材班)
意義・争点
城間氏 よりきめ細やかに
市民ニーズに対し、数量的な側面から対応してきたが、これからは質的な側面、きめの細やかさに施策の重心をシフトする時期にきている。特に協働によるまちづくりに向け、新たなコミュニティーとして期待される小学校区のまちづくり協議会の設立を推進してきた。2016年度には小学校区コミュニティー推進基本方針を策定した。今月12日には8校目となる小禄南小学校区まちづくり協議会の設立総会が行われる。加速度的に広がっている。
多様な地域ニーズへの理解を深め、諸施策への反映に努めてきた。市民ニーズに対応するためには、きめの細やかさを重視した施策の最適化が必要だ。施策のきめの細やかさという点が最大の争点になる。
翁長氏 軍港移設を進める
争点は那覇軍港移設と子育て支援策だ。(城間)市長は移設に向けた協議を重ねていると強調するが、4年間、協議は全く進まず放置し続けている。日米の統合計画で、返還時期は2028年度またはその後とされている。足踏みして良いわけではない。私は浦添市に寄り添う姿勢で問題を解決し、前進をさせていく。
現市政の4年間で給食費を値上げし、無料の妊婦歯科検診や2歳児歯科検診廃止など市民サービスを劣化させた。私は給食費無料化を実現し、医療費を高校3年まで無償化する。どの子も等しく学べる機会を提供するため、教育クーポンを導入する。那覇軍港移設、子育て支援ともに現市政ができなかったことを、実現力を持って成し遂げる。
経済・振興
城間氏 中小発展へ施策継続
非正規雇用率や若者の離職率の高さ、雇用のミスマッチなど課題がある。その解決に向け、県内企業の99%を占めるといわれる中小企業の発展に資する継続的な施策が必要だ。市の持つ可能性を着実な経済成長につなげるべく、経済振興政策を市政の重要な柱に位置付けている。
市長に就任した4年前と比較し、税収は2017年度に482億3437万円と伸び率109%の数字をはじき出した。新規企業誘致を推進し、雇用創出や振興で地域経済活性化を図る事業は17年度に累計実績が28社となった。市に立地や新規創業した企業に助成金を交付する助成事業の実績は123社。法人・市民税累計額が約25億円だ。
沖縄社会が抱える本土との経済格差縮小を目指して企業や起業家との連携、支援を通して、那覇市を次なるステージへ飛躍させるため力を十分尽くしたい。
翁長氏 物流産業拠点を整備
那覇市の交通渋滞は全国で最悪だ。公共交通機関の利用を促す必要がある。モノレールを2両編成から3、4両編成にし、環状線化で(公共交通の)空白地域の真和志地区への延伸を目指す。コミュニティーバスと乗り合いタクシーを無料化する。さらに那覇始発の鉄軌道を実現したい。
経済振興起爆剤として、那覇空港や那覇港海浜エリア一帯の開発で物流や産業の拠点を整備する。観光客を受け入れる基盤整備も欠かせない。2年後には那覇空港第2滑走路が開通するため、新ターミナルの整備を国に働き掛ける。第2クルーズ船バースの整備も実現し、那覇港をクルーズ船出発港とする。
昨年度に那覇市を訪れた観光客の消費額は平均7万5千円で、宿泊日数は1・5日しかなかった。宿泊数の増加、魅力ある観光商品の開発、食の充実などで観光を量から質へ転換する。
子育て・福祉
城間氏 保育料無料、県と連携
待機児童解消に向け、認可保育所等の数を2倍に拡充し、定員増を図った。まず子どもが保育所で活動する場の提供、器を整えた。保護者のニーズに合わせ、通勤途中で預けたい人、実家の近くで預けたい人、兄弟姉妹が同じ保育所に預けることができるなどニーズに細やかに対応し、真の待機児童ゼロを目指す。
潜在保育士の確保に向け、独自事業としてフルタイムで就職した場合、10万円を給付する潜在保育士の就職応援給付金事業を実施した。先頭に立ち、保育士確保に力を注ぐ。
県と連携し、保育料無料化を推進する。子ども医療費助成制度は医療費無償化を中学3年まで拡充する。子どもの貧困対策は自立支援員や寄り添い支援員、子育て世帯自立支援員を配置し、児童生徒の実態把握や登校支援、学習支援などを行った。給付型奨学金を開始した。子どもの未来応援プロジェクト推進基金を充実し、長期的に取り組む。
福祉施策で、地域包括支援センターを市内12カ所から18カ所へと拡充し、機能充実を図る。障がい者の医療費補助や高齢者が住み慣れた地域で暮らすために福祉バス運行や、ゆいレールの1日乗車券の補助の施策を推進する。
翁長氏 医療費無料、高3まで
本来なら那覇市は出生率が高く、若くて活力のある街であるはずだ。だが現市政の下で強みを伸ばすような十分な子育て支援策は行われていない。私は子どもの給食費無料化や高校3年までの医療費の無償化を実現する。待機児童もゼロにしていく。保育士確保を処遇改善で実現する。
児童クラブの利用料は月額1万円以上に上り、全国的にも割高だ。利用料金の軽減を図る。特に重視するのが教育クーポンの導入だ。月額1万円程度のクーポンを支給し、子どもたちが塾や習い事、スポーツ教室に通うことを支援する。
現市長は特別養護老人ホームの整備計画を引き下げた。私は入所者のニーズを調査した上で、整備計画の拡充を図る。障がい者に住みよい街にしていくため、バリアフリー基本計画構想も策定したい。
城間市長は無料の妊婦歯科検診や2歳児歯科検診、がん検診を3年前に廃止をしながら、今になって「やっぱり効果があった」として復活すると発言した。当時の判断の誤りを自ら認めている。3年間無料受診できなかった市民への責任をどう考えるのか。私の政策が正しいという証左になっていると認識している。
中心市街地のまちづくり
城間氏 伝統との融合図る
中心市街地は国際通りを中心に商業施設や公共施設、文化教育施設が集積している。魅力ある地域資源が多く、観光客を引き付ける市や県の顔といえる重要な区域だ。一方、アーケードの老朽化や狭隘(きょうあい)道路、少子高齢化、地元客の商店街離れなど課題を抱えている区域でもある。課題への対応に加え、まちぐゎー文化と新たな市街地との融合により活性化を図りたい。
具体的には、アーケード再整備を支援し、まちなか居住を推進する。新文化芸術発信拠点施設の建設を進め、伝統文化の継承と新たな文化芸術を発信したい。
翁長氏 市民と協働し実現
台風24、25号で牧志公設市場周辺のアーケードが大きな被害を受けた。私は台風が通過するなり現地を見て回り、商店街の皆さんから話を聞いた。中心市街地の今後の在り方について、市長の存在感がまるでないという声が聞こえてきた。私は市民と共に協働のまちづくりを実現する。
被害を受けたアーケードは、消防法や建築基準法に違反した状態になっており、そのままの状況で修復するわけにはいかないと考える。商店街の皆さんとしっかり意見交換しながら、今後のまちづくりの在り方を早急に取りまとめたいと思う。
那覇軍港移設
城間氏 跡地利用へ計画策定
那覇軍港は、空港や港に近く、モノレールなどの公共交通機関が充実している。市内の宿泊施設や商業施設、観光地が近接し、さまざまな点でポテンシャルは高い。本市だけでなく、県全体の発展に資する跡地利用が望まれている。地権者と行政が互いに協力して進めていく必要がある。
現行の返還時期の2028年度またはその後を基本に、跡地利用計画づくりに取り組む。時期に合った(返還跡地などの)活用に対応していくことが必要だ。那覇港湾施設移設に関する協議会で協議しており、早期移設を要望している。
翁長氏 現市政では前進せず
現市政の4年で移設に向けた協議は前進していない。市長は先日、ボールは浦添市にあると述べた。しかし、移設協議会は那覇市と浦添市と県の三者で合意形成が図られない限り、議論の俎上(そじょう)に載せないという取り決めだ。今のような市長の姿勢では、議論を動かすことすらできない。
まずは那覇市が浦添市に寄り添う姿勢を示さなければ解決につながらない。軍港は市中心部に近い一等地だ。跡地利用が強く待たれている。軍港から那覇空港にかけて海浜エリア一帯を開発し、新たな産業や物流の拠点づくりをしたい。
辺野古移設
城間氏 新基地建設に反対
日米安全保障体制は国民が公平に負担を分かち合い、沖縄の過重な基地負担の軽減を強く求める必要がある。建白書の精神を貫き、県経済の自立の阻害要因でしかない新たな米軍基地の建設に反対する。普天間飛行場は即閉鎖すべきだ。直近の国政選挙の県内4選挙区のうち3選挙区で辺野古新基地反対を訴える候補が当選した。知事選でも県民の民意は改めて示されたと認識している。
翁長氏 国との裁判を注視
普天間飛行場移設問題は那覇市にとっても大きな問題だ。普天間を飛び立ったオスプレイをはじめとする米軍機が那覇上空も飛行するからだ。市民の安心安全を確保するため、オスプレイ早期運用停止や一日も早い普天間返還を強く政府に求める。仮に県が主張する通り辺野古埋め立て承認を撤回する法的根拠があるなら拒否しない。ただ、国が県を提訴するのは必至だ。裁判闘争の行方を注視する。
クロス討論
Q 一括交付金50億、非現実的では → 翁長氏 14年度、52億円だった
城間 一括交付金を50億円獲得すると言うが、現実的ではない。見解は。
翁長 一括交付金の配分額は人口や財政力で決まる。50億の獲得は現実的ではないとの指摘だが、城間市政がスタートした2014年度の那覇市における額は52億だった。14年度には県全体で1759億円だったが、18年度は1188億円で、571億円も減った。それに伴い、那覇市も30億となっている。予算がこれほどまでに減ったことは市長として恥ずべきことだ。あなたは4年間で2回しか沖縄担当相に予算の要請をしていない。私が市長になれば県全体の一括交付金を増やすべく、政府に徹底的に働き掛ける。
城間 給食費無料化の財源を捻出できるのか。担保のない公約は無責任だ。
翁長 弱者の方々や子どもたちの予算を削ることがあってはならない。無料化にかかる18億円は一括交付金が使えないため、一般財源から捻出しないといけない。つまり、予算の組み替えをする。国が持つあらゆる支援メニューを総動員していく。併せて徹底した行財政改革を進めていく。この中で市長給与のカットも行う。財源確保の方法は市長の努力と創意工夫次第であり、無責任ではない。大切なのはできない理由を挙げるのではなく、リーダーたる市長が政策を実現するという強い意志を持つことが大切だ。
Q 龍柱、市民の批判も多いが → 城間氏 観光都市の魅力向上
翁長 若狭海浜公園の龍柱は市民の批判も多い。造って良かったのか。
城間 若狭の海岸から国際通りを経て、首里に至る部分を都市のシンボルと位置付け、歴史文化の展開軸として環境整備を図っている。クルーズ船寄港が増加する中、市の新たな玄関口で最初に迎えるのがゲート的デザイン性のあるモニュメントであり、福州園などと併せて観光都市としての魅力向上につながる。
城間 若狭の海岸から国際通りを経て、首里に至る部分を都市のシンボルと位置付け、歴史文化の展開軸として環境整備を図っている。クルーズ船寄港が増加する中、市の新たな玄関口で最初に迎えるのがゲート的デザイン性のあるモニュメントであり、福州園などと併せて観光都市としての魅力向上につながる。龍柱をモチーフにした「龍柱会議」というさまざまなキャラクターも生まれている。それらを那覇の土産として商品開発につなげるなど新たな動きもある。市民にも一定の評価を頂いていると自負している。
翁長 那覇軍港の浦添移設は新基地建設ではないのか。新基地に賛成なのか。 城間 2001年に当時の浦添市長が造成地を造ることによる経済的発展や政策的な実現を図るために受け入れを表明した。15年には現浦添市長が市の持続的発展のために受け入れを表明しており、それを尊重し移設を容認する。浦添移設は新たな基地機能が追加されるものではなく、面積が縮小され、現状の那覇軍港の機能が同じ那覇港の中で移設されるため、新基地ではなく代替施設だと捉えている。翁長前知事も浦添移設を容認する考えを示した。その際、港湾内の移動という見解を示され、私もそう理解している。