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演劇「カフウムイ」を観て 謝名元慶福 味わい深い新しい舞台


演劇「カフウムイ」を観て 謝名元慶福 味わい深い新しい舞台 カフウムイ(果報の森)の一場面。知花小百合(左端)と久我真希人(左から2人目)ら(エーシーオー沖縄提供)
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 エーシーオー沖縄制作の「カフウムイ~不思議の島の夏の夜の夢~」(扇田拓也脚本・演出)が8~13日、那覇市のひめゆりピースホールであった。劇作家の謝名元慶福氏に劇評を寄稿してもらった。


 扇田さんの脚本演出と聞いて、身構えて行ったが、いい意味で裏切られ、心地よい舞台を見せてもらった。というのも、長年セリフ劇になじんできた僕にとって扇田拓也の世界は、外国語のようなでたらめ言語と身体表現の奇妙な世界で、見る僕に、わかるか、感じてくれているかを、問うものだったからだ。一言で言えば柔軟性を失いつつある80代には頭の体操を強いられているような舞台だったからである。

 観劇日は、保育園の子どもたちと一緒だった。自然発生的に演出家と子どもたちのたわいないやりとりがあり、それが、序章となり、身構えた心身をほぐしてくれた。

 今回の「カフウムイ」は「果報の森」という意味で、演出家が沖縄で生活しながら、シェークスピアの「真夏の夜の夢」をヒントに創造したものだという。

 舞台は森にすむ妖精たちの物語である。沖縄では、木の精といえばガジュマルに住むといういたずら好きなキジムナーが一般的だが、ここでは、森の王様と妃(きさき)が森の破壊を巡ってけんかをしたりするが、悪魔を追い出して仲直りするというファンタジックな物語でありながら、なにかしら沖縄の現実を思い起させてくれる。

 とは言っても理屈っぽい舞台ではなく、仮面劇の面白さや、沖縄の風土を感じさせる踊りや動きもあり、飽きさせない。不思議とジブリッシュ(でたらめ言語)も味わい深い。これも沖縄の地で生まれた新しい舞台と言えるだろう。

 出演者は、東京から東谷英人、久我真希人、岸野健太、沖縄から知花小百合、古謝渚、嶺井南希。とりわけ、知花のラストのダンスはかわいらしく印象的だ。

 音楽隊(チアキ、くによしさちこ、伊波はづき、後藤浩明)の生演奏が盛りあげてくれた。保育園の子どもたちもリズムをとったり、声をあげたりして楽しそうだった。

 老人の僕も、保育園の子どもたちも何かを感じたことは確かだ。

 (劇作家)