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「亀岩奇談」沖縄の今描く ひめゆりピースホール 又吉栄喜作品舞台に コミカルに、効果的演出


「亀岩奇談」沖縄の今描く ひめゆりピースホール 又吉栄喜作品舞台に コミカルに、効果的演出 自治会選挙に立候補する宮里和真(左・松浦慎太郎)と対抗馬のヒガノボル(右・当銘由亮)(エーシーオー沖縄提供、坂内太撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 田中 芳

 浦添市出身の芥川賞作家、又吉栄喜の小説「亀岩奇談」を原作とする同名の舞台が16~20日、那覇市のひめゆりピースホールで上演された。脚本は伊波雅子、演出は藤井ごう。主人公の青年を中心に人間模様を描き、政治や経済、埋め立てを巡る沖縄の問題も取り上げ、今を切り取る。個性豊かな登場人物たちが、笑いたっぷりのドタバタ劇を展開し、観客の心をつかんだ。

 舞台は架空の小さな島・赤嶺島。両親を相次いで亡くし、21歳にして多額の賃料を生む軍用地を相続した宮里和真(松浦慎太郎)が、亡き母の亮子(知花小百合)の故郷赤嶺島に移住する。働く意味も生きる意味も喪失した和真は、おば・桃原咲子(罍(もたい)陽子)の勧めで自治会長選挙に立候補する。島の自然や母の残した言葉に心を癒やしていくが、島の海に近づく不吉な影に気づく。

宮里和真(右・松浦)と宮里カメジロウ(左・知花小百合)
(エーシーオー沖縄提供、坂内太撮影)

 ボス(当銘由亮)やニコニコ普及運動の女・金城笑美子(城間やよい)ら、権力や金銭欲に駆られた大人たちに言い寄られ翻弄(ほんろう)されていく。普及運動に駆け回る女を城間はコミカルに演じて観客を笑いの渦に包んだ。

 物語の後半、亀岩を巡る不思議な世界を展開する。亡き母が飼っていたリクガメの宮里カメジロウ(知花)とともに和真は亀岩に向かう。海の表面を浮かんだり潜ったりする場面も効果的な演出が施され、一緒に海を漂っている感覚になった。歌や踊り、生演奏に加えて、伊波二郎さんのイラストを用いた演出なども、原作の世界をリアルによみがえらせた。演奏は寺田英一、伊波はづき。主催はエーシーオー沖縄。

(田中芳)


 「亀岩奇談」は28日午後7時、浦添市のアイム・ユニバースてだこホール小ホールで上演される。入場料は一般2800円、浦添市民割は2千円、高校生以下500円。問い合わせはてだこホール管理事務室、電話098(942)4360。