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沖縄を代表する歌姫・夏川りみさん デビューは演歌歌手、鳴かず飛ばず…運命変えた「涙そうそう」<第20回宮良長包音楽賞>


沖縄を代表する歌姫・夏川りみさん デビューは演歌歌手、鳴かず飛ばず…運命変えた「涙そうそう」<第20回宮良長包音楽賞> 第20回宮良長包賞特別賞を受賞した歌手の夏川りみさん(提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 第20回宮良長包音楽賞に音楽家の喜納昌吉さん、同特別賞に歌手の夏川りみさんが選ばれた。喜納さんは民謡とポップスを融合した独自の音楽を生み出し、「すべての武器を楽器に」と平和を築く音楽の力を世界に発信してきた。夏川さんは幼い頃から、故郷の石垣や沖縄への思いを伸びやかに歌い続け、国内外に「沖縄の心」を広く響かせてきた。同賞は、郷土が誇る作曲家・宮良長包を顕彰し沖縄音楽の発展と活性化を図る目的で、琉球新報社が創刊110年を記念して創設した。贈呈式を27日午後6時半から那覇市泉崎の琉球新報ホールで開く。会費は無料。一般の参加も可能。それぞれ1~2曲の受賞記念演奏を予定している。問い合わせは琉球新報社統合広告事業局、電話098(865)5255(平日午前10時~午後5時)。


 日本を超え海外でも愛される名曲「涙そうそう」など、数々のヒット曲を透き通る歌声で、人々の心に届けてきた夏川りみさん。どんな時も変わらない、歌うことへの思いの強さが夏川さんを導いてきた。

 石垣市出身。「気付いたら歌っていた」という幼少期の師匠は父親だ。毎夕2時間、演歌や歌謡曲を特訓してきたこともあって、小学生の頃から各地の歌唱大会で賞を総なめにした。中学1年で出場した長崎歌謡祭では、北原ミレイさんの「石狩晩歌」を歌い上げ、史上最年少でグランプリを受賞した。レコード会社にスカウトされ、15歳で上京した。寮生活をしながらデビューを目指す日々だったが、「早く歌手になりたくて、さみしさはなかった」と振り返る。

 16歳で演歌歌手の「星美里」としてデビュー。だが、CDを3枚リリースした後で行き詰まった。22歳で演歌歌手を辞め、沖縄に戻ることに。「歌が本当に好きなのか、もう一度自分を見つめ直したかった」。週1、2回はラジオパーソナリティー、夜はスナックで歌う生活を続けていた頃、以前所属していた事務所の社長から再び声が掛かった。「もう一回挑戦してみたい」。夏川さんは迷わず、上京を決めた。

 夏川りみとしてデビュー後の2000年、人生を変える出合いが訪れた。当時開催された沖縄サミットの関連行事を放映したテレビ番組で、BEGINが歌う「涙そうそう」を聞いた。夏川さんの心をつかんだのは特にサビのメロディー。「頭から離れなくて、歌いたいと思いました」。BEGINに直々に懇願し、レコーディングへ。その時初めて、作詞した森山良子さんが亡くなった兄への思いを込めた歌だと知った。「私が歌っていいのか」と迷いも出たが、「歌いたいという気持ちが上回った」。後に森山さんから「いっぱいいっぱい歌ってね」と声を掛けられた。夏川さんは「1人でも多くの人に届けよう」と誓った。

 歌は大ヒット。NHK紅白歌合戦への出場を果たし、レコード大賞金賞を受賞した。アジアや南米など海を越えて愛されている。「『涙そうそう』がなければ今の自分はいない。『涙そうそう』を初めて聞いて感動した気持ちをそのまま歌いたい」。発売から22年たった今も歌い方は変えていない。

 さまざまな場所で歌う中で、沖縄音楽の素晴らしさに改めて気付いた。今後は「沖縄民謡のアルバムを出したい」と意気込む。「沖縄の音楽はすてきな歌ばかりだ。次世代に残したい」。同郷でもある宮良長包が作曲した「安里屋ユンタ」は、海外のコンサートでも披露する。特別賞の受賞に「うれしい」と笑顔。「沖縄の曲を日本だけでなく海外にも届けたい」と目標を見据える。

 (田吹遥子)


 なつかわ・りみ 1973年石垣市出身。幼い頃より歌に親しみ全国各地の歌謡大会で活躍した。99年に夏川りみとしてデビュー。116週チャートインした「涙そうそう」や「童神」「愛よ愛よ」など多くのヒット曲を世に放ち、NHK紅白歌合戦出場や日本レコード大賞最優秀歌唱賞受賞などを果たす。アジアや南米でのコンサートを重ねるなど、その歌声は海外からも高い評価を受ける。2005年に石垣市市民栄誉賞を受賞した。


 宮良 長包

沖縄音楽の先駆者 宮良長包

 みやら・ちょうほう(1883~1939) 石垣島出身。教育者、作曲家。沖縄歌謡が市民権を得ていない時代に、標準語に改作した民謡の編曲や、沖縄の情感を歌う歌曲を100曲以上作曲した。沖縄音楽の先駆者といわれる。代表作に「えんどうの花」「なんた浜」「汗水節」など。沖縄の原風景を歌い「長包メロディー」として時代を超えて愛されている。


<選考委員>

森山政和(県音楽教育研究会顧問)
比嘉悦子(民族音楽研究家)
小浜司(島唄解説人)

<これまでの受賞者>

【宮良長包音楽賞】
第1回 普久原恒勇
第2回 中村透
第3回 伊志嶺朝次
第4回 沖縄交響楽団
第5回 泉惠得
第6回 山城功
第7回 嶺井政三
第8回 与世山澄子
第9回 登川誠仁
第10回 富原守哉
第11回 沖縄JAZZ協会
第12回 津波恒徳
第13回 屋比久勲
第14回 知名定男
第15回 翁長剛
第16回 大工哲弘
第17回 備瀬善勝
第18回 佐渡山安信、佐渡山真理
第19回 琉球交響楽団

【宮良長包音楽特別賞】
第1回 BEGIN
第2回 アルベルト城間
第3回 MONGOL800
第4回 下地勇
第5回 白百合クラブ
第6回 新良幸人
第7回 古謝美佐子、佐原一哉
第8回 大島保克
第9回 HY
第10回 ジョージ紫
第11回 きいやま商店
第12回 徳山義広
第13回 沖縄中央混声合唱団
第14回 宮沢和史
第15回 大城美佐子
第16回 Kiroro
第17回 沖縄男声合唱団
第18回 DA PUMP ISSA
第19回 西原高校マーチングバンド部

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【贈呈式】
 27日午後6時半 琉球新報ホール(会費無料)

【問い合わせ】
 統合広告事業局
 電話098(865)5255
 (平日午前10時~午後5時)