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琉球王国の古文書350点修復 奈良・天理図書館で公開 首里城復元の根拠資料も


琉球王国の古文書350点修復 奈良・天理図書館で公開 首里城復元の根拠資料も 修復された古文書の一つ。琉球漆芸に関する細かい仕様などが記されている(天理図書館提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 当銘 千絵

 奈良県の天理大学付属天理図書館に保管されている琉球王国の行政文書を中心とする資料群約350点が修復され、16日から同館で初めて一般公開される。中でも琉球王国官製の漆器に関する資料は、正殿玉座(御差床(うさすか))が平成の復元時の「黄色塗装」から、進行中の首里城復元において茶系色の「黄塗り」に変わる根拠となった資料だ。琉球史や漆芸の専門家は、琉球王国時代の資料は戦争などの影響により多くが焼失したため希少で、新たな知見の獲得につながる可能性があると期待を寄せている。一般公開は20日まで。

 公開される琉球古文書は一紙文書約280点、冊子文書約70点から成る近世琉球関係資料群。19世紀の資料を中核としつつも、一部に18世紀の資料を含んでいる。王府関係資料や「仕明請地帳」などの地方関係資料、「組踊」の台本、琉歌・漢詩文・和歌のほか、王府役人採用試験をまとめた資料など多岐にわたる。

 天理図書館の三村勤司書によると、これらの古文書は1961年、当時の同館職員が大阪の古書店から買い取った。その後、未整理のまま館内で保管していたが状態が悪かったため、一部の専門家にのみ現物を見せていた。今回、浦添市美術館学芸員で琉球漆芸の専門家でもある金城聡子さんらの協力を得ながら行った全面的な修復作業が完了した。

 三村さんは、まとまった琉球古文書の一つは京都大学所蔵の「琉球資料」があるが、同館所蔵の古文書のうち漆器に関するものは、琉球資料よりも100年近くさかのぼる内容だと指摘した。三村さんは「首里城の彩色や塗装に関わる重要な情報も含まれている。今後は琉球史研究などにも広く活用してもらいたい」と述べた。

(当銘千絵)