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「予想を超える情報量」 鎌倉芳太郎氏が撮影の貴重資料をデジタル化 沖縄県立芸大と東京文化財研究所


「予想を超える情報量」 鎌倉芳太郎氏が撮影の貴重資料をデジタル化 沖縄県立芸大と東京文化財研究所 首里城正殿正面、唐破風(1924~25年頃撮影)。鎌倉芳太郎氏撮影のガラス乾板をデジタル化し、画像処理したもの(沖縄県立芸術大学附属図書・芸術資料館蔵、沖芸大・東文研共同研究2024)
この記事を書いた人 Avatar photo 当銘 千絵

 県立芸術大学はこのほど東京文化財研究所と共同で、沖縄文化史の研究者で首里城保存に尽力した鎌倉芳太郎氏(1898~1983年)が撮影し、現在は同大が所蔵する重要文化財「琉球芸術調査写真」のガラス乾板をデジタル化する事業を完了した。鎌倉氏が撮影した写真群は近代化や沖縄戦により焼失した文化財の記録として極めて貴重な資料で、安定的な保存と利活用が課題となっていた。デジタル化で、写真からより細部の情報を読み取ることも可能となる。

鎌倉芳太郎氏
鎌倉芳太郎氏

 鎌倉氏は沖縄の文化芸術を幅広く調査・記録するため、1924年~27年に「琉球芸術調査」を実施した。当時の写真技術では最高とも評されるガラス乾板を使って撮影した首里城や琉球王朝時代の工芸品、歴代国王の肖像画「御後絵(おごえ)」などの写真は、現物が沖縄戦でほとんど失われたため、後世の研究にとって極めて重要な資料となった。

 写真群は他の資料とともに戦後、鎌倉氏の遺族から県立芸大に寄贈され2005年に国の重要文化財に指定された。往年の首里城をとらえた写真は沖縄史研究の上でも特に重要な資料として位置付けられ、首里城復元にも大きく寄与している。

 県立芸大の波多野泉学長は、デジタル処理した乾板が写し出す写真には、予想をはるかに超える情報量が詰まっていることが分かったと強調する。前回の首里城復元時には知り得なかった情報が見つかり、御後絵についても国王のひげの細部まで見えるものもあると指摘する。その上で「当時の写真から情報を最大限に引き出すことが可能となった今、さまざまな沖縄史研究にも応用できるはずだ」と期待を込めた。

 芸術性と資料性を併せ持つ写真群は、今後も多方面での活用が期待される一方で、時間の経過とともに劣化していくことが懸念されていた。今回、ガラス乾板をデジタル化したことで、写真群は被写体の鮮明さを保ちながら永久保存できるようになった。

 同大では事業の成果報告を兼ねて、今秋にも鎌倉氏に関連する展覧会を開催する。

(当銘千絵)