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空間と熱演で極限を描く 演劇「洞窟(ガマ)」4年ぶり ひめゆりピースホール、27日まで 沖縄


空間と熱演で極限を描く 演劇「洞窟(ガマ)」4年ぶり ひめゆりピースホール、27日まで 沖縄 ガマの中、極限状態にある学徒看護隊員の仲宗根良子(左・片平貴緑)と学徒隊員の金城忠良(右・齋藤慎平)=18日、那覇市のひめゆりピースホール(坂内太撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 沖縄戦中の壕(ガマ)を舞台にした演劇「洞窟(ガマ)」(嶋津与志作、藤井ごう脚色演出、エーシーオー沖縄主催)が18日、那覇市安里のひめゆりピースホールで始まった。上演は4年ぶり。極限状態を生きた人間の悲劇や生きざま、今につながる命の尊さを、俳優たちの熱演と空間全体で鮮烈に表現した。

 「洞窟(ガマ)」は、県史編さんに携わった嶋(本名・大城将保)が南部一帯のガマを調査し、戦争体験者の証言を集めて作った。1995年には八重瀬町の壕で上演されたが、今回は4年前の公演と同じくセットでガマを表現した。ホールは戦前、沖縄師範学校女子部と県立第一高等女学校があった場所だ。

 沖縄戦を経験した祖父・大城勝男(齋藤理花)の足跡をたどる女性(齋藤、二役)がおばぁ(新城カメー)とガマで出会い戦時中を振り返る。6月末の南部のガマには、学徒看護隊員の仲宗根良子(片平貴緑)や子と逃げる仲村渠カナ(知花小百合)や比嘉ナベ(宮里香澄)、神女の真栄平ウタ(城間やよい)ら女性、馬肉売りの比屋定鎌(当銘由亮)、現地補充兵の山城樽(花城清長)のほか、三木軍曹(栗野史浩)、野村少尉(清田正浩)、辻一等兵(山口雅義)と、軍民が混在する。

 頭上に響く砲弾の爆発音、三木の怒号が直接飛ぶ、後ろから子の泣く声がする、目の前で瀕死(ひんし)状態の防衛隊員・垣花(上地竜司)がうなる。セットを囲うように配置された客席からの鑑賞は、まるでガマの中にいるような没入感があった。当初は三木の怒声に腰が引けていた山城も、終盤には目の色が変わって女性たちに怒声を浴びせるように。優しい学徒隊員・金城忠良(齋藤慎平)が人をあやめ、斬り込みに出る前に名前を叫ぶ場面は驚きと恐怖があった。極限状態で人が変わる様(さま)を、目の前に存在する人間を通し、これでもかと感じさせた。
 おばぁの祈りでガマの中で死んだ一人一人が起き上がる演出は、亡くなった人たちの存在を映し出す。おばぁの「ガマがあったから生きることができた。生き残った人がいて今がある」との言葉も印象的だ。藤井が子どもたちの平和の詩から着想を得て追記したという現代の視点が、暗闇を照らす一筋の光となった。

 音楽はしゃかりのチアキ、くによしさちこ、汐花。1月に死去した平良進も声で出演している。

 今後の公演日時は、全て午後で22日2時、23日1時と6時、24日2時、25日1時と6時、26日1時と6時、27日2時。前売り券3千円、25歳以下2千円、15歳以下1500円(当日各500円増し)。未就学児は入場不可。完売の回もある。問い合わせはエーシーオー沖縄、電話098(943)1357。

 (田吹遥子)