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佐藤惣之助の詩の世界、朗読と歌、組踊で立体的に表現 「銘苅子」一場面も上演 なはーと 沖縄


佐藤惣之助の詩の世界、朗読と歌、組踊で立体的に表現 「銘苅子」一場面も上演 なはーと 沖縄 佐藤惣之助が詠んだ琉歌の歌詞で披露した「花風ふし」。舞踊は佐辺良和=7日、那覇文化芸術劇場なはーと
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 詩人・佐藤惣之助が沖縄を詠んだ詩を基にした公演「琉球諸嶋風物詩集―惣之助の詠んだ沖縄―」が9月7、8の両日、那覇文化芸術劇場なはーと大劇場で開かれた。7日は佐藤の詩の世界を朗読と歌、踊り、組踊で立体的に表現。8日は佐藤の出身地、川崎と沖縄のつながりをテーマに展開した。7日を取材した。

 佐藤は「六甲おろし」の作詞などで知られる。神奈川県川崎市出身で1922年6月10日に初めて沖縄を訪れた。来訪から101年にあたる昨年も公演を開催した。

佐藤惣之助(真照寺提供)

 24年に刊行された「女性 第五巻第六号」に掲載された随筆「琉球の雨」には組踊「銘苅子」の冒頭の「通水節」が登場する。公演では、組踊「銘苅子」の銘苅子(神谷武史)と天女(佐辺良和)の出会いの場面を上演した。

 22年に刊行した「琉球諸嶋風物詩集」の詩を宮城さつきさんが朗読した。佐藤の詩には佐藤が詠んだ琉歌と音楽を表す節名が記されている。朗読の前後では、地謡が詩に添えられた節に琉歌を乗せて披露した。歌三線は仲村渠達也、徳田泰樹、下地彩香、箏は友寄朱里、笛は松川享平。

 「花風(はなふ)ふし」では、詩の朗読の後で「花風節」に乗せて佐辺が舞った。雨を歌う詩の世界観と相まって、しっとりと湿度を感じる演舞だった。フィナーレの「やんばるのちるのために」は、ちるの芳醇(ほうじゅん)な美しさとたくましさが伝わった。

佐藤惣之助の詩を朗読する宮城さつきさん

 座談会では、詩の訳を手がけた歌人の名嘉真恵美子さん、琉球古典音楽家の仲村渠達也さん、琉球大学教授の新城郁夫さん、なはーとの村上佳子さんが登壇し、佐藤の詩の世界観について語った。

 名嘉真さんは佐藤の詩について「詩の中に揺れる場面があり、そこで幻想と実景が入り交じっている」と指摘。新城さんも「一つの風景を見ながら少しゆがんだ背景を描いている。詩を読んだ当時と昔の沖縄を対比させている」と語った。仲村渠さんは、この2年の取り組みについて「琉球諸嶋風物詩集のおかげで、ジャンルを超えたつながりを持てた」と語った。

 8日は川崎沖縄芸能研究会も出演し、佐藤が見たとされる琉球舞踊を披露した。両日とも東京大衆歌謡楽団が出演し、佐藤が作詞した歌謡曲を歌った。

 (田吹遥子)