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沖縄芝居の世界を堪能 多彩な見どころ、観客魅了 国立劇場おきなわの鑑賞教室


沖縄芝居の世界を堪能 多彩な見どころ、観客魅了 国立劇場おきなわの鑑賞教室 時代舞踊劇「松の精」のラストで結ばれた金松(左・佐辺良和)と真鶴(右・知念亜希)を松の精(右上・東江裕吉)が見守る=9月12日、浦添市の国立劇場おきなわ
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 国立劇場おきなわの沖縄芝居鑑賞教室「松の精(まーちぬしー)」が9月12~14日、浦添市の同劇場であった。渡嘉敷守良作の時代舞踊劇「松の精」と、大宜見小太郎作の喜劇「くつ」が上演された。いずれも嘉数道彦演出。テンポよくにぎやかに展開する芝居の世界に、大勢の観客が魅了された。12日の朝公演を取材した。

 時代舞踊劇「松の精」は、結婚式を間近に控えた金松(佐辺良和)と真鶴(知念亜希)が松の木で将来を誓い合っているところに、美女の思戸(花岡尚子)が登場する場面から始まる。思戸の美しさに心を奪われた金松は、徐々に心変わりし、思戸を結婚相手に選ぶ。絶望した真鶴が松の木で死のうとすると、松の精(東江裕吉)が現れる。松の精が金松を改心させ、2人は再び結ばれる。一方、思戸が鬼女だったことが分かる。

ドタバタ劇が楽しい喜劇「くつ」の一場面

 歌や踊り、新郎が花嫁の家にあいさつに行く「婿入り」の風習など、見どころが多彩な芝居だった。特に真鶴役の知念が歌う「安里屋節」は美しく憂いを帯びた高音に聞き入った。思戸役の花岡は、金松を惑わす妖艶さと鬼女の不気味さを巧みに演じていた。松の木を描いた精巧な舞台美術や、婿入りの行列で演者が花道を歩くなどの演出も芝居を引き立てた。

 喜劇「くつ」は、街の靴屋が舞台。靴屋に寄付を募ってやってきたPTA会長(上原崇弘)が、集金した封筒を店先に忘れてしまうところから物語が展開する。封筒に気づいた靴屋の主人(宇座仁一)はとっさに商品の長靴に隠す。その様子を陰で見ていたのが高利貸の金森(高宮城実人)。後でその長靴を買い取るも、封筒は既に主人の妻(伊礼門綾)が別の靴に移していた。

 松竹新喜劇「お祭り提灯」を元に沖縄風にアレンジした作品。テンポのいいドタバタ劇と街の人たちのつながりに、人情劇を基調とする小太郎劇ならではの温かさを感じた。こちらでも回り舞台や花道を存分に使い、演者が客席にも飛び出す展開は観客たちの目をいっそう楽しませた。

 (田吹遥子)