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乗り切れるか、秋の繁忙期 修学旅行シーズン、シフト管理複雑に<迫る24年問題 沖縄の現場から>(4)貸し切りバス


乗り切れるか、秋の繁忙期 修学旅行シーズン、シフト管理複雑に<迫る24年問題 沖縄の現場から>(4)貸し切りバス 貸し切りバスから降車する観光客ら=14日、県庁前
この記事を書いた人 Avatar photo 與那覇 智早

 「空港に送る部分だけでいいから、カバーできるところはないか」。バス運転手の人手不足が加速し、修学旅行のバス不足が顕在化した2023年秋、県内バス事業者は焦燥感に包まれた。

 10~12月の修学旅行繁忙期を目前にした9月末、「バスが1200台足りない」と混乱が広がっていた。

 修学旅行客などが多く来県する秋口に、貸し切りバスは繁忙期を迎える。対応は急務だった。各社はツアーバスの調整会議を設け、通常は1社が担ってきた乗客と送迎を別々の会社が行うなど、事業者の垣根を越えた協力体制を敷いた。

 「沖縄に着いたが、バスがない」という最悪の事態は回避できた。だが、運転手不足が深刻化する業界に、今年は「2024年問題」が追い打ちをかける。現時点で「相当数足りない」(バス事業者)ことが予想される今年の秋の繁忙期を乗り越えられるかは不透明だ。

 働き方改革関連法により、4月から、バス運転手の終業から始業までの休息期間が従来の8時間から9時間に1時間延びる。これまで以上に人手不足が深刻化することが予想される。「明らかに今よりも運転手の数が必要になるはずだ。秋は特に厳しい」。バス会社関係者は警戒を強める。

 旅行社やツアー客との調整を必要とする貸し切りバスの稼働時間は5~13時間程度と、ツアー団体によって大きく変わる。本島周遊観光などで長時間労働が見込まれる場合は、同じツアーでも担当する運転手を分ける必要が出てくる。これまでにないツアー日程や運転手の休息期間を加味してのシフト管理を迫られる。

 県バス協会の山城克己会長は「慢性的なドライバー不足に労働環境の変化が加わり、人手不足が加速してしまう」とため息を漏らす。

 県内バス会社の関係者は「路線バスの場合は路線の再編や減便などで法律に合う状態を3月中に作り終えられるが、観光バスの場合はその年や時期によっても需要が変わる。予測がつかない」と話す。

 同社は、自社システムで配車の予約を管理している。システムは稼働する台数ベースのため、予約を受ける時に労働時間、休息期間がどれだけになるかをチェックすることはできない。「法律に合わせた新たなシステムの導入にも時間がかかる。今後は人的にシフトを調整する必要がある」。関係者はより煩雑になる労務管理に疲労感をにじませた。

 県内の別のバス会社は、休息時間を法令通りに確保するため、送迎先のホテルで乗務員を宿泊させるなど工夫をしているが、8時間から9時間に休息時間が延長されたことで「これまで以上に泊まりの仕事が増えるかもしれない」(関係者)。その場合は運転手とセットで働くバスガイドも宿泊せざるを得ず、拘束時間が長くなるなどの弊害も懸念される。

 「旅行社に時間の短縮を依頼することも一つの方法だが、その分の収益は落ちてしまう」。関係者は頭を抱える。沖縄の団体旅行を支える貸し切りバスは、24年問題で岐路に立たされている。

 関係者は「法律なのでどうすることもできないが、とにかく秋の繁忙期までに何かしらの対策を立てなくては」と言葉少なに話した。

 (與那覇智早)