東京証券取引所などに上場する地方銀行・グループ73社の2024年3月期決算が14日出そろい、全体の約7割に当たる51社が増益となった。前期に米国の急速な利上げに伴う外国債券の売却損を計上した反動に加え、保有株式の売却益などが業績の追い風となった。ただ、貸出先の中小企業は円安による原材料の輸入価格上昇などで苦境にあり、地銀経営の先行きには不安も残る。
各行は投資目的で米国債を中心とする外国債券を保有している。米国が急速に利上げしたことで米国債の利回りが上昇(価格は低下)し、前期は損失を計上した地銀が目立ったが、24年3月期は損失計上が一服した。顧客企業の株式を持つ「政策保有株」を減らす動きもあった。
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73社の純損益の合計は9739億円の黒字。黒字額は前期比310億円(3・3%)増だった。福岡銀行を中核とするふくおかフィナンシャルグループの純利益は、貸し出しが伸びて96・4%増の611億円となった。八十二銀行(長野市)の純利益は、長野銀行(長野県松本市)の子会社化による一時的な利益で53・6%増えた。
減益は愛知銀行(名古屋市)と中京銀行(同)を傘下に置くあいちフィナンシャルグループや高知銀行など20社だった。貸し倒れに備える与信関係費用が増えた。
赤字は2社だった。仙台銀行ときらやか銀行(山形市)を傘下に置くじもとホールディングスは、貸出先の経営支援に関する費用を積み増した影響で234億円の赤字だった。
きらやか銀は9月が期限の公的資金返済が困難になったとして、国との協議を始めた。外国債券の売却損を計上した清水銀行(静岡市)は33億円の赤字だった。
25年3月期の業績見通しは、46社が増益や黒字転換を見込む。
金融機関の資産運用を支援する日本資産運用基盤グループ(東京)の白滝俊之ディレクターは「今年3月の日銀によるマイナス金利政策の解除を受けて利ざやがどの程度改善するかに注目している」という。