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早期利下げ、期待先行 FRB高官は慎重発言


早期利下げ、期待先行 FRB高官は慎重発言 米金融政策を巡る主な発言
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均が、初めて4万ドルの大台に乗せて取引を終えた。好調な企業業績だけでなく、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げに対する期待先行の側面も強い。ただFRB関係者からは利下げに慎重な声が相次いでおり、先行きには危うさも漂う。
 「物価上昇率は当面、高止まりするだろう」「物価上昇率の縮小が停滞すれば、政策金利を引き上げる用意がある」。FRBのボウマン理事は17日の講演で、市場の利下げ期待をけん制するような発言を繰り返した。
 FRBは3月に公表した経済見通しで、年内に3回の利下げを見込む。市場では6月にも利下げを始めるとの見方があったが、物価上昇の根強さを受け期待は一時後退。だが今月15日に公表された4月の消費者物価指数(CPI)が予想を下回り、利下げ期待が再燃した。指標に一喜一憂しつつ株価は上昇を続けた。
 ただ、パウエルFRB議長は「忍耐強く金融引き締め策が役割を果たすのを待つ必要がある」と話し、一貫して拙速な利下げは避けたい考え。CPIが発表された15日にもミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が「もうしばらく様子を見る必要がある」と、高金利政策を維持する可能性に触れた。市場の「早とちり」で株価が上昇したとすれば、一転して失望売りで急落する危険をはらむ。
 利下げを期待するのは市場だけではない。高金利による経済への悪影響を懸念する声は根強く、11月の大統領選を見据えて景気悪化を避けたい与党民主党からは利下げ要求が相次ぐ。バイデン大統領からも3月に「(FRBは)利下げするに違いない」と政策への介入とも受け取られかねない発言が飛び出した。
 バイデン氏との対決が確実視されるトランプ前大統領は、選挙前の利下げ実施を「民主党を助ける」と批判。利下げを検討するパウエル氏を「政治的だ」と指摘し、交代もちらつかせながらけん制する。
 利下げは企業の借金負担を軽くし業績を上向かせるほか、投資を誘発して景気拡大や株価上昇につながりやすい。半面、拙速な利下げはインフレを再燃させる懸念もある。日銀関係者は「市場や議会からの要求に屈することなく利下げ時期を判断できるか、FRBは正念場だろう」と話した。
 (ワシントン共同=建部佑介)