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農林中金、赤字5000億円超 25年3月期、リーマン並み


農林中金、赤字5000億円超 25年3月期、リーマン並み 農林中央金庫の純損益推移
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 農林中央金庫(農林中金)は22日、2025年3月期の連結純損益が5千億円超の赤字になる見込みだと明らかにした。米国の金利上昇を受けて外国債券を中心に2兆円余りの含み損が生じており、外債の一部を売却して損失を計上する。赤字に転落すれば、リーマン・ショックの影響で5721億円の赤字となった09年3月期以来16年ぶりで、赤字額も同期並みとなる見通しだ。
 農林中金は財務の健全性を確保するため、1兆2千億円規模の増資を検討しており、出資者の農業協同組合(JA)などと協議する。増資は貸し出しよりも返済の優先順位が低く、自己資本とみなせる「劣後ローン」などを活用する。リーマン・ショック後も1兆9千億円の増資をしていた。
 奥和登理事長が東京都内で開いた記者会見で業績見通しなどを説明した。奥氏は「(巨額赤字の)責任は痛感している。難局を乗り切ることで責任を果たしたい」と述べ、続投する意向を示した。「(自らの)報酬の減額はもちろんする」とも述べた。
 農林中金の市場運用資産残高は3月末時点で56兆円。半分を超える31兆円が債券投資で、米国債などの外債が大半を占めている。米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)が物価を抑えるために22年から急速に利上げしたことで外債の利回りが上がり、価格が下落した。
 債券の含み損は24年3月末時点で約2兆2千億円まで膨らんでいた。今後は利回りが低い外債を中心に売却を進め、代わりに債券や株式などの買い入れを検討する。

 農林中央金庫 農林水産業の発展を目的に1923年に設立された民間金融機関。地域を基盤とする農業協同組合(JA)や、都道府県に設置された信用農業協同組合連合会(信連)が出資している。JAなどから集めた資金を債券や株式で運用したり、農林水産業に関連する企業に融資したりしている。市場運用資産残高は2024年3月末時点で56兆円、連結総資産は99兆円。