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AMラジオ 終焉か 13社休止実験、FM視野 新たな聴き方も拡大


AMラジオ 終焉か 13社休止実験、FM視野 新たな聴き方も拡大 ラジオのAM放送とFM放送の違い
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 近い将来、あの音が聴けなくなる?―。全国に47ある民放AMラジオ事業者のうち13社が2月から順次、AM放送を休止して影響を調べる実証実験を始めている。より低コストのFM放送への転換を視野に入れており、AM放送はそのまま廃止に至る可能性も。1925年にAMで歩み出したラジオ放送。100年の節目を前に一つの時代が終わろうとしている。
 「ラジオは家の真ん中にあり、家族で楽しむメディアだった」。日本ラジオ博物館の館長、岡部匡伸さん(60)は語る。AMのみで始まったラジオ放送は、45年8月15日の昭和天皇の玉音放送など歴史的なニュースを人々に伝えてきた。放送技術の進化とともにやがて聴き方は変容。53年のテレビ放送開始後、しばらくすると家庭の娯楽の中心はテレビとなり「ラジオは一人で聴くものに」(岡部さん)。それでも長寿番組「オールナイトニッポン」(67年~)のような若者文化の担い手が生まれ、音がきれいなFMラジオの放送も始まった。
 ラジオの時代を切り開いたAM放送の逆風となったのは、近年のラジオ離れと設備の老朽化だ。AMは送信設備が大がかりで老朽化に伴う更新費用もFMの約50倍に上る。AMラジオ事業者は既に災害対策などのため、同じ番組をFMで同時に流す「ワイドFM」と呼ばれる補完放送を実施しており、AMとFMを両方維持するのは重い負担。事業者側が総務省に要望し、AM放送を一定期間休止する実験を行ってみて、影響を調べることになった。
 休止実験は最長で来年1月までで、その後の対応については「各社の意向次第」(総務省)だ。ただ、同省が今年4月に開いた有識者会議では「(AM放送の)速やかな廃止を希望する」(山口放送の担当者)といった声が出ており、今回の休止実験は多くの地域でAM放送の廃止につながる可能性が高い。
 AM時代が終焉(しゅうえん)を迎えつつある一方で、ラジオの新たな聴き方も広がっている。「AMのざわざわした感じが懐かしい」。中学生のころにAM放送をよく聴いていたという東京都の女性(39)は最近、インターネットでラジオ番組が聴ける「radiko(ラジコ)」を楽しんでいる。ラジオに詳しいライターのやきそばかおるさん(49)は、ネットで音声を配信するポッドキャストは音質が良く、過去の番組も簡単に聴けるため「若者はうまみを感じている」と指摘。未来にラジオ文化を受け継ぐため「まだまだ改善できる点がある」と力説した。