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メリット薄れ、五輪離れ イメージ悪化、制約、高コスト… 撤退連鎖懸念も   


メリット薄れ、五輪離れ イメージ悪化、制約、高コスト… 撤退連鎖懸念も    「TOPプログラム」の契約締結を発表し、握手するIOCのバッハ会長(右)とトヨタ自動車の豊田章男社長(当時)=2015年3月、東京都千代田区
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 トヨタ自動車がパリ五輪を最後に、国際オリンピック委員会(IOC)の最高位スポンサーから降りる方向となった。最大のアピールの場だった東京五輪では新型コロナウイルス禍で原則無観客となった上に、強行開催や汚職・談合事件による負のイメージも重なった。メリットを見いだせない日本企業の五輪離れが浮き彫りとなり、同じく最高位契約を結ぶ他の2社の連鎖も懸念される。

欠席

 3年前の東京五輪。トヨタは開催に慎重な世論への配慮から国内で五輪のテレビCMを中止し、豊田章男社長(現会長)の開会式出席も見送った。当時から五輪と距離を置く姿勢が垣間見えた。あるトヨタ幹部は「五輪などの協賛には一定の区切りを設けるべきだ」との考えを明かした。
 創業者の故豊田喜一郎は車づくりとスポーツの挑戦を重ね合わせ、社内の部活動に力を入れてきた。現在は国内リーグなどを主戦場とする「強化運動部」と、人材育成や職場の活性化を目的とする部や団体がある。社員選手は約180人。スポーツ熱は高いが、五輪そのものとは今後一線を画し、所属選手やパラリンピックの支援に、より力を入れる意向だ。

やりづらい

 最高位スポンサーは世界で五輪マークを使った商業活動ができるが、競技会場で企業ロゴを使えないなど、制約が多いとされる。五輪関係者は「IOCから『あれは駄目』『これは駄目』と言われる。協賛金も高く、やりづらい」と指摘する。
 協賛金額は非公表だが、トヨタは総額1千億円超とされる。多額の投資に見合った意義はコロナ禍でさらに薄れ、拝金主義的なIOCの姿勢も国内で批判の的となった。
 「協賛金が選手のためでなく、IOC幹部らのために使われているのではないか」。ある五輪スポンサー企業幹部からは、こんな疑問も漏れる。

見極め

 日本では、パナソニックホールディングス(HD)とブリヂストンが同じくIOCの最高位契約を結んでおり、今後について、パナソニックHDは「契約上、当社からお答えすることはできない」、ブリヂストンは「今後の契約について現時点で決まったことはない」としているが、関係者によれば契約継続の是非を見極めているといい、撤退するとの観測もある。
 IOCの重要な資金源である最高位スポンサー。東京五輪もあり、3社が契約していた日本はIOCにとっても重要なパートナーだったが、札幌市の冬季五輪招致失敗も含め、関係性に溝が広がりつつある。
 IOCのマーケティング担当幹部はトヨタの撤退意向を受け「とても残念だ」と表情を曇らせた。
「TOPプログラム」の契約締結を発表し、握手するIOCのバッハ会長(右)とトヨタ自動車の豊田章男社長(当時)=2015年3月、東京都千代田区