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需要変化でノンアル増加 ビールで乾杯…今は昔?


需要変化でノンアル増加 ビールで乾杯…今は昔? 純アルコール量20gのイメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 多量飲酒のリスクが指摘される飲み放題メニューを、大手外食チェーンが続けることが分かった。一方、利用客にはノンアルコール飲料の需要が高まっており、「最初の一杯はビールで乾杯という文化」(外食業界筋)が“今は昔”となってきている。飲まない人を取り込む必要から、旧来のアルコール主体の飲み放題には変化も見える。
 外食大手ワタミが運営する居酒屋「ミライザカ」では飲み放題メニューで扱うノンアルコール飲料を、2018年の10品目から23年には15品目に拡充。全国の各店舗には、定番飲料に加え「いちごみるく」や「レモネードアイスティーソーダ」がメニューに並ぶ。
 東京都内の元店長は「20~30代の男性中心だった客層が、新型コロナウイルス禍を経て変わった」と語る。最近は「最後に全員でいちごみるくを頼んで写真を撮る女性グループもいる」。
 「はなの舞」を手がけるチムニーは1月からメニュー開発を強化し、サワーやハイボールに使う素材をノンアルコール飲料にしてメニューに加えている。4月は愛媛県産ブラッドオレンジを使ったソーダを提供した。毎月、期間限定で新しい商品を売り出す方針だ。
 それでも、飲み放題は利用客から人気だ。外食各社が挙げるのが、事前に予算を確定できることで、宴会の幹事が会費を計算する手間が省け、参加者が「ドリンクの金額を気にせずに飲める」(「焼肉きんぐ」などを展開する物語コーポレーション)という利点だ。
 酒類の消費形態を調査する酒文化研究所(東京)の狩野卓也社長は「コロナ禍や飲み方の変化を経ても会計面から利用を求める声は変わらないだろう」と分析する。
 厚生労働省の指針は個人向けのもので、純アルコール量に注目することが重要だと指摘。1日当たり20グラム以上の摂取で大腸がんなどのリスクが高まり、1回に60グラム以上摂取する「一時多量飲酒」では急性アルコール中毒や酩酊(めいてい)によるけがの危険が高まるとした。
 20グラムはビール中瓶1本や日本酒1合に相当する。指針策定の過程では、注意する場面として、飲み放題を例示するべきだとの議論があった。
 一方、コロナ禍で時短営業を迫られてきた店側からは、指針が業績回復に冷や水を浴びせるとの恨み節も漏れる。これに対し、厚労省の担当者は「指針は特定の業態やメニューを禁止するものではない。個人が自分の適正量を把握することが重要だ」と話した。