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【深掘り】宮古群島の「黒穂病」、雨で拡大か 有効な農薬なく対策に追われる 沖縄


【深掘り】宮古群島の「黒穂病」、雨で拡大か 有効な農薬なく対策に追われる 沖縄 胞子の分散を防ぐため、ビニールで覆われた黒穂病の発病株=5月、宮古島市(県病害虫防除技術センター提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 新垣 若菜

 サトウキビの成長を阻害する黒穂病が宮古群島で広がっている。有効な農薬は存在しないことから、まん延した場合、農家が大きな打撃を受けるのは必至だ。県病害虫防除技術センターの担当者は、黒穂病は胞子が風や雨で飛散し広がることから「最近は雨が続いていたので、その影響が大きかったのではないか」と分析している。防除には発病株を抜き取り植え替える必要があり、同センターは早期の点検と対策を呼びかけている。

 発病は県内農家で取り扱いが多い品種「農林27号」で集中していることが確認された。同品種は収穫量が多いことに加え、耐倒状性もあり、収穫作業も効率よく行えるとして好んで栽培している農家も多いが、他品種に比べ黒穂病への抵抗が弱いという。

 県内では過去に1970年代に多発した黒穂病。その後品種改良を重ねるが、91年にも当時、県が推奨していた「農林9号」で県全体に急速に広がったことがある。県では抵抗性種苗の増殖の普及に力を入れるが、「農林27号」が浸透する宮古島市では2016年度以来の注意報発表となった。

 県病害虫防除技術センターは特定農家の畑(ほ場)を調査地として、毎月検査を実施。今回、5月の調査で、宮古島と伊良部島の20カ所のうち70%にあたる14カ所、多良間島では20カ所の全てで発病を確認した。黒穂病自体は胞子が飛散する5~7月、10~11月にかけて発生がピークとなり、毎年発生は確認されている。ただ、例年は今回のように大きく広がることはないという。関係者は「調査ほ場以外でも広がっている可能性はもちろんある」と強調した。

 有効薬が存在しないため、県では、鞭状体の出現した茎は胞子の飛散を防ぐために、ビニール袋をかぶせて抜き取り処分するほか、発病したほ場と近隣農地からは採苗しないよう徹底した防除策を呼びかけている。

 しかし、関係者は「発病株を探して袋をかぶせてなどの作業は負担も大きく、現実的に厳しいことも正直ある」と漏らし、「もちろん対策は取るが、これ以上広がらないことを祈るしかない」と途方に暮れた。 

(新垣若菜)