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金利復活 備えに不安 会議乱立、焦点ぼやける


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府が経済財政運営の指針「骨太方針」を決定した。日銀による金融政策の正常化で金利が復活し、財政収支が一段と悪化する恐れがあることを踏まえ、データに基づいた賢い歳出の強化を掲げた。ただ、各省庁や族議員の要望を数多く盛り込み、本当に優先すべき政策を絞り込めるかは不安も残す。経済政策の方向性を決める会議も乱立し、焦点はぼやけ気味だ。

時限爆弾

 日銀の植田和男総裁は18日の国会答弁で、7月の金融政策決定会合での追加利上げについて聞かれ「十分あり得る」と言い切った。7月会合では月間6兆円規模の国債購入額の減額計画も示す。いずれも長期金利を押し上げる可能性がある。
 政府は満期になった国債から順番に高い金利で借り換える。このため、すぐに利払い費が急増するわけではないが、高金利はいずれ財政を直撃する「時限爆弾」(財務官僚)ともいえる。骨太方針では「金利のある世界に備え財政の信認を確保する」と強調し、財政健全化の取り組みの継続を訴えた。
 鍵を握るのが、データに基づく効果検証を政策立案に生かす「EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メーキング)」だ。狙った効果を得られない政策をふるいにかけるため、骨太方針で「徹底強化」を掲げた。
 具体的には、多年度にわたる重要政策については、関係省庁が予算要求の段階でEBPMの手法を取り入れ、結果を翌年度以降の予算編成にも生かす。政府に対し「より良い政策選択につながる検証が希薄だ」(経済同友会)といった指摘が出ていたことを踏まえた。

政策ありき

 EBPMを推進するための人材育成や体制整備も掲げたが、理想と現実には距離がある。ある官僚は、政策ありきで都合の良いデータを集めることもあるとして「ポリシー・ベースト・エビデンス・メーキングが実態だ」と自嘲した。
 50ページ超の骨太方針には、マイナンバーの利用拡大から宇宙開発まで、幅広いテーマが並ぶ。しかも多くは、新しい資本主義実行計画など、経済政策の方向性を議論する他の会議の取りまとめと重複する。多くの会議は岸田文雄首相が議長を務め、出席する大臣の顔ぶれも共通するため、それぞれの会議の役割分担はあいまいだ。
 経済企画庁(現内閣府)OBの小峰隆夫大正大客員教授は「有識者会議が多く、目指す方向性が分かりづらい。首相の強いリーダーシップが発揮されない限りは大胆な取捨選択は難しい」と語る。