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特定の病気へのかかりやすさなど異なる可能性も 免疫遺伝子、地域で差 琉球大など研究チームが発表


特定の病気へのかかりやすさなど異なる可能性も 免疫遺伝子、地域で差 琉球大など研究チームが発表 2万人分の遺伝情報を基に各個人の遺伝的背景を解析し、本土と琉球列島の遺伝的な違いを機械学習により示した図。点と点の距離が遺伝的な違いを反映している。琉球列島の各島嶼でもその差を区別することができる(琉球大学提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 慶田城 七瀬

 琉球大と理化学研究所(埼玉県)などの共同研究チームは10月31日、日本本土と琉球列島を含む2万人のヒトゲノム情報の集団遺伝解析した結果、免疫に関する遺伝子の保有に違いが見られたと発表した。また、琉球列島集団では、本島や宮古、八重山、慶良間や久米島など島しょごとにも遺伝的背景がわずかに異なっていた。地域などの環境要因により、特定の病気へのかかりやすさなどが異なる可能性があるという。

 ヒトゲノムの一部は、病気のかかりやすさや薬の効きやすさなど体質の個人差は親から子へ引き継がれる。また、寒冷地や高地などの地域で特定の環境に適応し生存に有利な対立遺伝子ができると次世代に引き継がれやすく、出現頻度も増え、「自然選択の痕跡」と呼ばれている。

 過去には、アルコール耐性に関連するALDH2遺伝子のお酒に弱いタイプ(rs671ーA)が本土集団で残った一方、琉球列島集団ではお酒に弱いタイプの痕跡は検出されなかったとの研究もある。

 今回の研究では、ヒトゲノム情報は、沖縄バイオインフォメーションバンクの6613人分と、国立長寿医療研究センターバイオバンクの1万3753人分から検出を試みた。

 検出の結果、琉球列島集団が本土集団よりも、免疫疾患に関わる「HLA対立遺伝子」の自然選択の影響を受けていた。これにより、1型糖尿病や歩行困難などが起こる難病「ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV―1)関連脊髄症」の発症頻度が低い一方、日中に突然強い眠気が起こる「ナルコレプシー(過眠症)」や免疫異常の難病「全身エリテマトーデス(SLE)」の発症頻度が高かった。

 研究チームは、疾病構造の解明や地域による遺伝背景を考慮した健康増進が期待されることから「島嶼ごとの詳細な解析のためにもより多くのゲノム検体を用いた解析が必要だ」としている。

 研究は10月30日付で進化生物学の学術雑誌「Molecular Biology Evolution」に掲載された。

 (慶田城七瀬)