屋良知世さん(37)=糸満市=は高校生の頃、友だちとの関係性に悩み、保健室に通うようになった。友だちに合わせて振る舞ってしまう自分にストレスを感じ、憂鬱(ゆううつ)になることが多かった。養護教諭はいつも慌ただしそうにしていたが、とりとめのない話にも耳を傾けた。屋良さんは高校卒業後、大学で養護教諭の免許を取得。現在は県内に拠点校がある通信制高校で働く。「先生に助けてもらった自分の経験を生かしたい」。当時を振り返り笑顔になった。
高校では放課後にほぼ毎日、保健室に通った。「苦痛が自分の中にたまり続けていた。そのままだと不登校になっていただろう」。そんな苦しい思いをはき出せた場所が保健室だった。養護教諭は出張で保健室を空ける場合、事前に屋良さんへ連絡したという。「私を思い出してくれてうれしかった。存在を認めてくれているんだと安心できた」。屋良さんも養護教諭になりたいと思うようになった。
大学で養護教諭の免許を取得し、卒業後は高校で臨時的任用の養護教諭となった。学校にはかつての屋良さんと同じように、保健室を心のよりどころにしている生徒がいた。屋良さんと“恩師”の関係のように生徒に寄り添い続けた。屋良さんが関わった生徒の中には現在、養護教諭を目指して大学で学ぶ教え子もいる。「私が先生にしてもらったことを、次につなげられたようでうれしかった。『先生、あの時はありがとう』の気持ちを、子どもたちに受け継いでいけたらいいな」。感謝のバトンをつないでいく。