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ギャンブルで借金続ける両親、貧困、性被害… 「どうせ変わらない」絶望に陥った女性を変えた出会い、養護教諭の言葉


ギャンブルで借金続ける両親、貧困、性被害… 「どうせ変わらない」絶望に陥った女性を変えた出会い、養護教諭の言葉 イメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 沖縄県内で教育関係の民間企業に勤めている女性=30代=は幼少期、ギャンブルにはまって借金を続ける両親に苦しみ、電気を止められるなど経済的にも困窮した。小学生の頃には性被害に遭い、誰にも相談できずにいた。女性は非行に走ったが、中学で出会った養護教諭が寄り添い、女性は初めて心の内を明かすことができた。現在、女性は教員を志している。

 物心ついた頃からよく家の電気、ガス、水道が止まった。近所の公園で水をくみ、小学校の同級生に見つからないよう隠れるように運んだ。帰らない両親に愛情を求めた一方、嫌悪感は高まった。

 大人のいない自宅で体を触られる性被害に遭った。いつも明るい気持ちにしてくれる友だちはいたが、家のことも自宅で受けた性被害も相談することはできなかった。

 助けてほしいという願いは、「どうせ変わらない」と絶望感に覆われ、外出が増えた。小学校高学年でタバコや酒を覚え、一緒に騒げる不良友だちとの付き合いは中学でも続いた。生徒指導は日常茶飯事だった。

 女性を変えたのは中学で出会った養護教諭だった。女性や非行を否定せずに寄り添った。保健室に会いに行く機会は増え、ある日心の内を明かすことができ、打ち解けていった。

 養護教諭は女性に教員になることを勧めた。「マイナスだと思っているその経験を、プラスに変えることができるよ。あなたにしかできない、子どもへの寄り添い方がある」。女性は驚きをもって受け止めたが、次第に「先生になりたい」と思いを強め、やがて前へ進んだ。

 家計は厳しかったが、奨学金を活用して高校に進学した。大学ではアルバイトをいくつも掛け持ちして学費と生活費を稼ぎながら、中高の教員免許を取得した。臨時教員、支援員などを経て、本年度は民間企業に勤めながら通信教育で小学校の免許も取得した。

 「自分にしかできない寄り添い方をまだ見つけられていないが、悩みを抱えている子の存在に早く気付くことはできるかもしれない。過去の自分を助けるかのように、誰かの役に立ちたい」。4月には小学校で臨時教員をしたいと考え、準備を進めている。

(嘉数陽)


 11月25日は「先生ありがとうの日」。園児がいる家庭向けの無料情報誌を発行する「こどもりびんぐ」が発案し、日本記念日協会が認定した。感謝の気持ちが先生に多く届いてほしいとの願いが込められている。過重な業務負担などを背景に教員不足は深刻だが、その存在に救われた子どもや保護者は多い。「あの時先生がいてくれたから今の自分がある」と感謝する人たちを取材した。