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誰もが通いやすい学びの場を 「市町村教室」の設置訴え 自主夜間中学卒業の中村さん(82)


誰もが通いやすい学びの場を 「市町村教室」の設置訴え 自主夜間中学卒業の中村さん(82) 「誰でも通いやすい市町村教室の設置を急いで」と話した中村ヒサ子さん=15日、うるま市の自宅
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 学校法人雙星舎(そうせいしゃ)は4月、全国初の私立夜間中学校「珊瑚舎スコーレ東表(あがりおもて)中学校」を開校する予定だ。理事長の星野人史さんは「できる限り多くの義務教育未修了者に学びの場を用意したい」との思いから2月、県に対して、公的な卒業証書を発行できる東表中を運営主体とした「市町村教室」の開校を求めて陳情書を提出した。誰もが通いやすい「市町村教室」の設置を求める声は当事者からも上がっている。その一人、中村ヒサ子さん(82)=うるま市=は「県が責任を持って設置を進めてほしい」と訴えている。

 中村さんは宮城島の生まれで、戦後の混乱期にあった幼少期、体の弱かった父親に代わって小学6年生の頃から住み込みで家事・育児の仕事を始めた。島から離れた那覇市で必死に仕事をしながら、制服を着て学校に通う同じ年頃の人たちを見掛けると、恥ずかしくて隠れて歩いた。5人の兄弟と両親の支えにはなれたが、大人になって結婚し、子どもたちが生まれた後も「学校に通えなかったという劣等感は消えなかった」。

 63歳の時、転機を迎えた。偶然目にした新聞に珊瑚舎スコーレ自主夜間中学の記事が載っていた。「自分も勉強したい」と、詳しい場所も分からないまま当時住んでいた沖縄市からバスに乗って学校がある那覇市(現在は南城市)へ向かった。入学が決まり、その後は3年間、毎日2時間かけて通学した。「勉強したいという夢がやっとかなった。あまりにも楽しくて、通学は苦にならなかった」と話す。「もっと学びたい」と、卒業後は泊高校夜間部にも通い、充実した日々を送った。

 笑顔で当時を振り返る中村さんだが、「学校が遠くて、最初から入学を諦めた人、途中で諦めざるを得なかった人たちもいる」と悔しそうに語る。「本来、学びの保障は国や県が責任を持って進めるべきだ。県が義務教育未修了者のことを本気で思うなら、誰でも通いやすくて公的な卒業証書を出すことができる市町村教室の設置を急いでほしい」と強い口調で語る。「学びたいという気持ちに向き合ってほしい」と、県への期待を込めた。
  (嘉数陽)