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性の多様性 身近な課題に 中学教科書、表現に制約も


性の多様性 身近な課題に 中学教科書、表現に制約も LGBTQなど性の多様性について記述した教科書
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 性の多様性や新しい家族の在り方に関し、来春から中学生が使う教科書での記述が大幅に増える。道徳や保健体育では全社が性の多様性を題材にして、身近な課題として考えるための工夫が見えた。ただ指導内容を定めた学習指導要領は従来型の価値観を踏襲し、表現に制約もある。性的少数者の子どもを支援する専門家は「社会に合わせた変化が必要」と指摘する。
 男性2人の暮らしを描いた漫画「きのう何食べた?」や、同性カップルの育児を紹介する絵本「ふたりママの家で」―。技術・家庭で各出版社は、家族構成の例を並べる際にアニメ「ちびまる子ちゃん」のような父母や祖父母のいる家庭とは別の形を示した作品を、こぞって取り上げた。
 文部科学省によると、性の多様性に関して記述した教科書は現行版の16点から27点に増加。同性婚など「新しい家族の在り方」の扱いも6点から13点へ倍増している。
 多くの教科で目立つ変化が、スラックスを着用した女子生徒の挿絵だ。各地に性差のない制服が広がっていることを反映している。編集者は「学校にはいろいろな子どもがいる。傷つくことがないようにした」と話す。
 保健体育の1冊は、それぞれの人に性自認や性的指向があり、全ての人に当てはまる概念を表す「SOGIE(ソジー)」の説明を載せた。性的少数者に関する記述だけでは不十分との判断からで、担当者は「性的少数者だけを扱うと、自分の事ではないと受け取るかもしれない。誰もが関係ある大切なことだと示した」と意義を語る。
 元小学校教員でLGBTQ+(性的少数者)の若者支援に取り組む団体「Proud Futures」共同代表の小野アンリさんは「教科書に載ることで『LGBTQ+は学ぶべきもの』と認識される。学校間で温度差を生まないため、国は指導要領を変えて、社会の意識変化に対応する必要がある」と強調した。