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<インタビュー>裏金問題「教材」に 林大介・浦和大准教授 政治の現実 語れる学校へ


<インタビュー>裏金問題「教材」に 林大介・浦和大准教授 政治の現実 語れる学校へ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 学校現場を含む日本社会は政治の話題をタブー視しがちだが、浦和大の林大介准教授は自民党の裏金問題を「教材」にすることは可能だと話す。主権者教育のあるべき姿を聞いた。

 子どもにとって自民党派閥の裏金問題は身近に感じにくい内容だが、連日のニュースを目にして関心を持つこともあるだろう。「どうして政治資金収支報告書に記載しなかったのか」「裏金を何に使ったのか」という疑問は、中学の社会や高校の公共などの学びを深める入り口になる。

 例えば使途を考えると、政治家の待遇についての調べ学習につながる。歳費の他に国会議員用鉄道乗車証(JR無料パス)なども支給されるのに、なぜさらに資金が必要なのか疑問が広がるはずだ。法律面に目を向け「刑事罰を受けていない議員が、これほど批判を受けるのは適切なのか」といった問いを設定することもできる。

 2016年に選挙権年齢が18歳に引き下げられたのに合わせ、文部科学省は「政治的中立性を確保しつつ、現実の政治的事象も取り扱うなど実践的な指導をする」との方針を高校向けに示した。国として授業で政治課題を扱うことを禁止しているわけではないのだ。

 しかし、仮に裏金問題を取り上げれば「自民党を批判するための偏った指導だ」とやり玉に挙げられることが予想される。実践的指導をためらう教員は今も多い。私が以前、視察したスウェーデンの学校では、原発のように論争的なテーマでも「A、B、Cとさまざまな主張があるが、あなたはどう考えるか」と教員が議論を促していた。日本も、教員や生徒が政治について安心して意見表明できる環境になることが望ましい。

 学校は社会の映し鏡でもある。大人が政治的な話題をタブー視し何かを「おかしい」と訴える人を白い目で見てはいないだろうか。主権者教育で正面から政治を語れるようになるには、社会全体の言論の在り方が変わる必要がある。

 はやし・だいすけ 1976年東京都生まれ。中学高校の社会科講師などを経て現職。

(共同通信)