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戦争を繰り返さないために 石川博久(琉球大学教育学部付属小学校校長) <未来へいっぽにほ>


戦争を繰り返さないために 石川博久(琉球大学教育学部付属小学校校長) <未来へいっぽにほ> 石川博久
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 終戦から79年、まもなく慰霊の日を迎える。私は昨年度、沖縄戦の記憶継承プロジェクトの学習会に参加し、専門家や体験者の話を聞き、戦跡を巡った。戦争の犠牲となり命を失った方々や、生き残ったがいまだ心の傷が残り、それを背負って生きている方々一人一人のつらく悲しい事実を知った。その事実を知れば知るほど、戦争を繰り返さないために、体験者ではない私が今できることを考えた。教師として沖縄戦を学び直し、どのように子供たちにその事実を伝え、共に考え、自分事として捉えさせていくのか。

 私が6学年の担任で平和を考える授業を行った時に「大切な多くの命が亡くなり、街や生活が一瞬にして破壊されてしまうと分かっているのに、なぜ人は戦争を繰り返すのだろうか」と問いかけたことがある。子供は「自分たちのことしか考えていないからだよ」と即答した。その通りだと思った。

 だから私は、学級・学校を「小社会」と見立てて、子供たちが安心して笑顔で生活できることを考えている。課題があれば一緒に話し合い、決まった改善策を仲間と協働しながら実践する。常に自身の行動が他者に与える影響を考えながら、このような実践を小学校低学年から計画的・系統的に取り組むのだ。

 一見、戦争を繰り返さないことと別の話のように聞こえるかもしれないが、学校教育の現場でこのような実践を積み重ねることこそが、子供たちがこれから直面する共同の問題を自分事として捉え、幸せな社会を自分たちの力でつくることにつながると考えている。

 戦争を繰り返さないために、これからも自分の立場でできることを考え行動し続ける。

石川博久 いしかわ・ひろひさ

 琉球大学付属小学校校長。県小学校特別活動研究会会長、日本特別活動学会九州・沖縄理事。沖縄戦の実相や継承のあり方を学ぶ学習会にも参加している。1966年生まれ、那覇市出身。