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内定で親の同意「オヤカク」 専門家に聞く


内定で親の同意「オヤカク」 専門家に聞く マイナビ研究員の長谷川洋介さん
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 大学生らの就職活動で学生優位の「売り手市場」が続く中、企業が内定を出した学生の親に同意の確認をするケースが増えている。「オヤカク」と呼ばれ、企業側には内定辞退やミスマッチによる早期離職を防ぐ狙いがあるが、学生からは戸惑いの声も。専門家は親の対処法をアドバイスする。
 オヤカクは、企業が内定者を通して行う場合や、親や保護者に直接、連絡したり同意書への押印や署名を求めたりする場合などがある。
 東京都内に住む大学4年の女性(21)は2月、志望するIT企業から内々定をもらった際、内定承諾書の提出と親への確認を求められた。関西在住の親に伝えると、長時間労働と低賃金という業界のイメージや、知名度が低い企業だったことから落胆され、「就活を続けたら」と勧められた。
 女性は人事担当者に相談し、決算書類などで会社の安定性を親に示し「最後は自分の意志を通し、諦めてもらった」。オヤカクは親の思いを知り、一緒に考えるきっかけになったというが「親が子どもの決断に強く影響することはあってはならないと感じた」とも話す。
 就職情報会社マイナビの調査によると、企業から子の内定確認の連絡を受けた保護者の割合は、2018年度は17.7%で、23年度は52.4%と増加傾向にある。同社キャリアリサーチラボ研究員の長谷川洋介さんは「学生が複数の企業から内定をもらうことが多い中、企業は親とも関係をつくり内定者をつなぎ留めようとしている」と分析、コロナ禍の影響もあったと推測する。「学生とのオンラインでのやりとりだけで自社の本当の姿が伝わっているか不安で、親にも確認した方が良いと考える企業が増えたのでは」
 では、親側はどんな心構えが必要か。長谷川さんはオヤカクを受けて不安を抱いても、企業と直接やりとりするのは避けるべきと助言。子どもに懸念や疑問を伝え、話し合うところから始めることを勧める。その際「就活の仕方や働き方、就労観が自分たちの頃から変わっていることを認識してほしい」と強調する。
 キャリアコンサルタントで立教大兼任講師の翁理香さんは、大学生のキャリア開発に携わってきた経験から「企業は親との関係性や対話の仕方から、内定者の人間性も見ている」と読み解く。「最終的な意思決定者は学生」とした上で、「オヤカクは親子が『働く』について対話する機会になり得る」と指摘する。
 学生に対しては内定先のオヤカクや親の反対にひるむ必要は全くないと言い切る。「企業にオヤカクの意図や目的を尋ね、納得したら親に話せばよい。その企業でなぜ働きたいのか、根拠と思いをもって説得や反論を試みては」