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孤立防ぐユースクリニック 生理や予期せぬ妊娠相談


孤立防ぐユースクリニック 生理や予期せぬ妊娠相談 「たんぽぽユースクリニック」で生理用品の説明をするスタッフ(右)=5月、埼玉県坂戸市の女子栄養大
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 生理や予期せぬ妊娠、人間関係など、若者が心や体の悩みを専門家に気軽に相談できる「ユースクリニック」を各地に広げようという動きがある。東京や京都では行政による設置も。関係者は、悩みを抱えた若者が孤立するのを防ぐため「国の主導でSOSを出せる場を全国につくってほしい」と訴える。
 「生理痛がひどくて…」。5月下旬、女子栄養大(埼玉県坂戸市)の学園祭に合わせて開かれた「たんぽぽユースクリニック」を訪れた高校1年の女子生徒は、生理の悩みを相談していた。
 ユースクリニックを開催したのは埼玉医科大助教で産婦人科医の高橋幸子さん(49)と、女子栄養大のサークル「たんぽぽ」のメンバーで、養護教諭を目指す学生ら。ブースには性教育の本や生理用品のほか、さまざまな避妊具を展示し、模型を使ってコンドームの装着を練習するコーナーも設置。親子連れなど約400人が訪れた。
 日本では、中学の学習指導要領に「妊娠の経過を取り扱わない」との歯止め規定がある影響で、性教育が不十分だと言われている。たんぽぽ代表の矢島里紗さん(21)は「どんな性教育を受けられるか学校によって差があると思う。こうして詳しく学べる場が増えるといい」。
 予期せぬ妊娠に悩む女性を多く診察し、各地で性教育の講演をする高橋さんも「知識だけでなく、悩んだ時に気軽に相談できる場が必要」と強調する。スウェーデンには自治体ごとにユースクリニックがあり、授業で子どもが見学に行くほど身近な存在だ。そうした場所を日本でもつくろうと、約1年前から活動を始めた。同じような問題意識を持った医師らが取り組みを広げている。
 東京都は2023年11月、渋谷駅近くに「とうきょう若者ヘルスサポート(わかさぽ)」をオープンし、看護師らが対面や電話、メールで相談に乗る。男子中高生からが多く、「彼女が妊娠したかもしれない」などの内容も。5月からは病院で緊急避妊薬(アフターピル)をもらう際の同行支援を始めた。
 京都市では5月、市と地元のユースサービス協会が「京都ユースクリニック」を始めた。中学生~30歳が対象で週1回、伏見青少年活動センターで開催。普段からセンターで若者の相談に乗っている協会のユースワーカーと連携し、必要に応じてユースクリニックにつなげ、看護師などから助言を得られる仕組みだ。運営に携わる太成学院大の日吉和子教授(看護学)は「地域差が生まれないよう国が主導して継続的に運営する『常設型』のクリニックを増やしてほしい」と訴えた。