沖縄の芸能事務所3社=FECオフィス・オリジンlil(リル)・よしもと沖縄の連携による「てんたか」は、注目が集まるお笑いプロジェクト。ライブ開催に加え、7月にはバラエティー番組が3局(琉球放送・沖縄テレビ・琉球朝日放送)でそれぞれ放送されるなど活動拡大中です。放送作家集団「作家上等」メンバーが関わっていることも特徴のひとつといえるでしょう。県内エンタメ史に刻まれるだろうこのプロジェクトを追跡する本連載。2回目の今回は、オリジンlil社長・首里のすけさんのインタビューと6月に行われたライブリポート・前編をお届けします。
(隔月掲載)
饒波貴子(フリーライター)
直撃! オリジンlil社長・首里のすけさん
―芸人としてライブに出演し、社長として運営に関わる「てんたか」。どんな思いを持っていますか?
芸人の出る場所が増えるのは、とてもいいことだと思っています。人口比で見ると、「全国一人数が多い」とされているのが実は沖縄芸人なんです。地方の芸人、例えば滋賀芸人や新潟芸人とかはほぼいないと言っていいと思います。大阪か東京にほとんど集まっていますし、福岡や北海道など大都市にはいたりしますが、沖縄はとにかく人数が多いです。なので沖縄県民のみなさんは芸人がいっぱいいるのが当たり前に思えるでしょうが、イベントやテレビ・ラジオに芸人が出ているのは他の地方では当たり前ではありません。ローカル芸人がこんなにいるのは、全国の人は不思議でしょうね。そんな知られていない沖縄のムーブメントなので、全国に伝えられるようなプロジェクトになればいいなと思っています。テレビ番組がパッケージになるといいですし、沖縄芸人の集結が元気玉として全国に届けられるくらいのムーブメントが起きれば、すごく面白いのかなと思っています。沖縄芸人がこんなにいっぱいいるんだよと、全国の方に知ってもらいたいです。県民のみなさんには、番組やライブをもちろん楽しんでいただきたいです。
ーライブの本番前に、若手が出る「まえたか」というコーナーもできましたね。
出番のあるなしは競争になり、今まであまり出ていなかった芸人に出られる場所を作ることができると思っています。特にテレビは「どうせ先輩が出るもの」と思っている若手にとって、隣にいる同レベルの芸人の出演が決まったら刺激を受けるはずです。そんな意識を持ってもらいたいですね。
ーFECの山城智二代表は「芸人が切磋琢磨してお互いに磨きをかける場になるんじゃないか」と期待しているそうですが、芸人側もその思いはありますか?
もちろんそう思います。結局競争の場がないと、なかなか磨かれていかないと思うんです。狭い沖縄でできるだけ競争をしようとなると、事務所の垣根を超えていくところでしかできないはずです。
ー自分のレベルやスキルを上げるため、番組やライブ共演で頑張らないといけないという期待もやる気もあるんですね。
もちろんです。僕自身もレベルアップするために頑張ろう、という気持ちでいます。社長が若手芸人ということではなく、僕の場合は若手芸人が社長をやっているだけですよ(笑)。社長より芸人としての順番が上です。
ー3月1日に開催した初回の「てんたか」ライブに出演しました。感想を教えてください。
やっぱり楽しかったです。当日は会場に入る時間が夕方4時で、開演が夜8時でした。普通4時間の待ち時間があるとむちゃくちゃ長いですが、その日は長く感じなかったんですよね。あっという間にライブが始まった感覚でした。3事務所の芸人が集まるライブが久しぶりだったこともありますが、本当にシンプルに楽しかったですね。お客さんの盛り上がりもあったので、「すごいことになるんじゃないか」という雰囲気は感じました。
ー「てんたか」のアピールをお願いします。
いつもライブに来てくださるみなさん、芸人の活動を見てくれている沖縄のお笑いのファンのみなさんには、もちろんチェックしていただけるプロジェクトだと思っています。そして今まで沖縄のお笑いを見たことのないみなさん、興味がなかったみなさんに刺さるようなことができたらいいなと考えています。多くの芸人とスタッフさんが動いて取り組んでいるプロジェクトなので、ぜひたくさんの人に見ていただきたいです。
ー今年4月、株式会社オリジンlilを設立しました。力を入れて取り組んでいることについて教えてください。
東京支部・石垣支部を発足しました。東京支部は先輩芸人のベンビーさんが東京に行ったことをきっかけに発足しましたが、僕も月に1回程度は東京に行き活動を増やす環境作りを進めています。さまざまな経験ができる場所を探しまずは沖縄関連のことから始めていて、5月は代々木公園の「OKINAWAまつり」にノーブレーキさんが出させてもらい、6月は横浜市鶴見で「オリジンlil東京進出記念大同窓会」というライブを開催。7月は「中野チャンプルーフェスタ」に呼ばれ、ベンビーさんと僕のコンビしんとすけが出演しました。そうやってイベント参加の機会を作りつつ行った足でライブにも出演して、東京でも活躍の場を広げていきます。またキングオージャーなど戦隊物の制作会社、「アイ・ペアーズ」さんとパートナーシップを提携し、スタジオを使用させてもらって事務所の定期ライブ「喜笑転決」のパブリックビューイングを行なっています。東京でも沖縄芸人のネタを毎月見ることができますし、アイペアーズさんの沖縄での活動は僕たちがバックアップします。石垣支部は石垣市でのイベント計画を進めたいと考えています。
ー東京に石垣、支部ができた場所で活動が広がっていますね。今後も期待しています!