着席した瞬間に「こんな近くでお互いの顔を見るのは初めて!」と笑い合った、「わさび」の具志堅将司(ぐしけん・まさし)さん(左)・小(こ)だいらくん(中央)と、ナビ芸人の初恋クロマニヨン・松田正(まつだ・しょう)」さん(右)。相方については「怒られる姿をよく見ますし、ツキのなさを感じる出来事が多いところが面白い」(具志堅さん)、「この見た目で繊細で優し過ぎるのが強みだと思います」(小だいらくん)とのこと。「わさび」について松田さんが質問すると、具志堅さんと小だいらくんが「初恋クロマニヨンさんはどうですか?」と逆質問をしたり笑い声が響いたり・・・盛り上がっていましたが、どんな会話になったのでしょうか!?
(執筆:フリーライター・饒波貴子)
エンジンかかり過ぎな人、ポジション取りが上手い人の組み合わせ
松田ナビ:「わさび」の印象は独自の動きをしているコンビ。実際はどうですか?
具志堅:「ネタをしっかりやりなさい」と事務所からいつも言われています。結成10年目にして初の単独ライブを8月に終えたばかり。ネタ10本をぶっ通しでやったので、正直ライブの内容は覚えていません(笑)。
松田ナビ:MC無しでぶっ通しとは、安室奈美恵のライブスタイルと同じ(笑)! 手応えを感じましたか?
具志堅:2本目までは手応えはありませんでした。先輩のあきら本店さんが裏方として手伝ってくれたんですが、「言葉が速くなっているのでゆっくりやった方がいい」とアドバイスをいただきました。それで3本目あたりから落ち着いてできました。
松田ナビ:芸人さん用語で「走る」とか「かかる」とか言ったりする。具志堅はどっしりしているイメージだけど、エンジンがかかりすぎて空回りする感じある!?
具志堅:あります、空回りします!
小だいらくん:好きな人が見に来たらそうなります。小さめの会場でのライブでも空回りしていました。ライブ終わりにお付き合いが始まったと聞きましたから。
松田ナビ:会場の大きさに関係なくエンジンかかるんだ(笑)。小だいらくんは具志堅の事情を知っているわけだけど、具志堅から見た小だいらくんはどうですか?
具志堅:緊張してえずきながらサラッと本番をこなすこともあれば、えずいたままで本番を迎えることもあります。「今日は大丈夫そうだ」など状態が分かるようになってきました。
松田ナビ:リカバリーできない時もありそう(笑)。「こいつ、緊張しているやし!」と腹立つことない? マイクチェックの時に相方の声がうわずったりしていたら、「今から緊張するなんて本番どうなるば~!?」と気になる時が僕にはあります。
具志堅:本番中、眉間にシワを寄せている小だいらくんが目に入ると、気になりますね。
松田ナビ:最近「芸人さんは相方と仲良くないといけない」という風潮があると思う。時代に合わせなければという脅迫観念のようなものがありつつ、ウソはつけないしな~と葛藤する中、気持ちを分かってくれそうなのがわさび(笑)。いい意味でじゃれ合わないだろうと思えるコンビなんだけど、距離感はどうですか?
小だいらくん:お互いにスイッチみたいなのが入れば、いじり合ったりしています。
具志堅:しゃべりやすくなってきたなど、年々仲良くなっている気はします。でも小だいらくんは先輩がいる時などに口数が減る時があり、それが気になります。
松田ナビ:最近、小だいらくんと飲む機会があるんだけど「どうせみんな、俺のこと良くない目で見ているんでしょ」というポジションになったりする。ポジション取りで注目を集めるテクニックがあって、すごいと思いました。
具志堅:場所取り芸人(笑)!
小だいらくん:疑心暗鬼なまま飲み会に参加しているので、そう見えるのかもしれません(笑)。
松田ナビ:作っているわけじゃない疑心暗鬼キャラは面白い。小だいらくんは以前「エビ」というコンビじゃなかった?
小だいらくん:そうです。エビは2014年に「フレッシュお笑い選手権大会」で大賞を取りました。FECに入ったのは13年ごろで、14年には解散しましたけどね。
具志堅:僕は1人でFECに入りました。本当はいとこを相方に「いとこ」というコンビ名を考えていましたが、「お笑い芸人にはなれない」と言われてしまったんです。
小だいらくん:そのいとこがラジオ番組にメールを送ってくれたことがあって、面白かったんですよ。だから、面白い一族だなと思いましたね。
松田ナビ:この「沖縄芸人ナビ」は2018年からやっているけど、具志堅のようなエピソードを聞くのは3人目かな!? 予定していた相方がついて来ないのは、お笑いスタートのあるあるなのかもね(笑)。2人はどうやってコンビになりましたか?
小だいらくん:具志堅も僕も1人でやっていたピン時代があり、一緒にやろうと話した時は「大福みっちー」もいて「イップマン」というトリオを組みました。
具志堅:同じ年の3人でネタをやってみたましたが、「2人の方がいいな~」って小だいらくんと話したんですよ。
松田ナビ:大福みっちーは相当面白いから、いた方がいいんじゃないの?
具志堅:みっちーをさばける人がいない(笑)。
小だいらくん:みっちーのためにも別れた方がいいと思いましたが、本人に聞こえないようにこそこそ話しました。そして次のライブのフライヤーでは、もう「わさび」になっていましたね(笑)。
具志堅:しれ~っと2人で組むことにしてみっちーには報告していないので、「許さない」といまだに言われます。
小だいらくん:2015年にコンビになったので、もう10年目ですけどね。
松田ナビ:そんな歴史があったとは(笑)。1人ずつの動きもありますが、具志堅はラジオはどうですか?
具志堅:帯番組をやりたい気持ちはありましたが、話をいただいた当初は「1人で?」と考えました。相方がどう思うのかも気になり、社長室で話して「全然いい」と言ってくれたのでホッとしましたね。本来仕切るのは相方なので不安はありました。
松田ナビ:ラジオでは具志堅が仕切り役になる。送り出す小だいらくんの気持ちは?
小だいらくん:「行ってこい!」と言いました。でも僕がバイトの面接をしていて相方のラジオが流れてきた時、胸が苦しくなったりしましたよ。それはそれで面白いですけどね(笑)。相方が1人で頑張ってラジオをやり、「わさび」のネームバリューを上げているならありがたいです。
松田ナビ:難しい・・・なんか腹立つよね(笑)。絶対俺の方が面白いと思うけれど、相方とも上手くやる必要がある。相方も1人だけでやった方がいいという思いがあるし。いろんなことを考えるだろうけど、よく踏ん切りつけたね。
小だいらくん:腹立ててばかりです(笑)。でも自分の力が足りていないと納得でき、踏ん切りがつくのは早かったです。
松田ナビ:コンビでのラジオ番組も続けていたけれど、具志堅的には相方以外の人が相手で感覚が違う?
具志堅:違います。帯番組を担当するのも気が張りますし、昼か夜かの時間帯でも気持ちが違う。そして感覚的には、どこか素で話せるのがコンビのラジオですね。どちらにも良さがあり楽しいですね。
松田ナビ:具志堅は壊し屋イメージを持たれることがあるだろうけど、気を使うタイプだよね。
具志堅:実は臆病者なんです。嫌われたくないのに爪痕は残したいみたいな(笑)。
松田ナビ:ライブとかでたまに会うと、「壊したいスイッチ」みたいなのが入る時ある。あれは何(笑)?
具志堅:承認欲求です(笑)。
松田ナビ:それは誰にもあるね(笑)。あるものを壊すことで、承認欲求が満たされる。その場はスベっても、後になって具志堅良かったな~と思う時もあるしね。
具志堅:ありますかね~(笑)!? 普段は人にものが言えなかったりするんです。それがたまって、お酒を飲んだら爆発します。
松田ナビ:それも分かるし、本番になるとスイッチが入るタイプ。僕も普段なかなか言えないけれど、本番になったら言えたりいじったりできる。だから具志堅の気持ちは理解できるけれど、小だいらくんは壊してやろうとは思わない?
小だいらくん:全く思いません。どうやって出るのかも分からない。相方が壊した時にフォローする役回りでいますが、最近は2人である程度準備をしています。
松田ナビ:準備をするとは意外(笑)。
具志堅:恥ずかしいことやっていますよね。
松田ナビ:恥ずかしくない。準備した方が絶対いいと思います。
小だいらくん:何も決めないのがカッコいい、と思っていた時期もありました。でも何もないまま終わるのを繰り返すうちに、少しは準備した方がいいんじゃないかという風になっていったんです。
具志堅:数は多くありませんが、ライブの平場など普段から準備しておいた方がいいとか、こうやってボケるならツッコミはこうした方がいいとかパターンを考えています。でも僕は病的なものもありますからね(笑)。
小だいらくん:ライブのオープニングでコンビごとに意気込みを聞かれる時がありますが、しょうさんたちはどうしていますか? 相方さんと共有していますか?
松田ナビ:準備した時期もあったけれど今はしていない。相方が嫌がっているような雰囲気を感じて止めたんだよね。自己紹介をしてちょっと絡むのは、意外に難しい。自分の番に回ってくるまでに何となく考えて、個人の出たとこ勝負なのでトリオとして機能していない(笑)。役割分担はトリオよりコンビの方が明確なので大変だと思う。ただ、わさびの場合ハッキリ見えてこない。ツッコミが小だいらくんでボケ担当は具志堅という基本スタイルは分かるし、ネタによって変えるだろうけどね。
小だいらくん:2人ボケもやりますからね。ただメディア出演の時は「役割をハッキリ分けるように」と言われたことがあり、気を付けています。