ゆいレール延長開業も渋滞緩和が進まない沖縄の特殊事情とは…


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 7年連続で過去最多の乗客数が続く沖縄都市モノレール(ゆいレール)の浦添延長は、沿線に住む住民の利便性だけでなく沖縄観光の広がりの観点からも好意的に受け止められている。一方で、モノレール整備の至上命令とも言える那覇都市圏の「交通渋滞の緩和」が目立って進んできたとは言えず、今後の取り組みが重要になる。

 ゆいレールの2018年度の乗客数は1905万7176人で、1日当たりでは目標値を1万人以上上回った。近年、バスの利用者も下げ止まりが見られ、総体として公共交通機関の利用者は増加傾向にある。

■全体の1%

 だが、那覇市を中心とした都市部の渋滞は抜本的な解消には至っていない。沖縄の一般道路の「混雑時平日平均旅行速度」は14・1キロで、東京23区の14・6キロ、大阪市の15・3キロより低い水準にあり、経済損失の度合いが見て取れる。

 背景には観光客の急増に伴うレンタカーの増加や、今や「1人1台」と言われるほど高い、県民の自動車保有率がある。県内の旅客輸送の9割以上を自家用車が占め、モノレールは1%にとどまっている。

 県公共交通活性化推進協議会会長の池田孝之琉球大学名誉教授は「モノレールの延長で、国道58号などである程度の渋滞緩和が予想される」と分析する。

 その上で「将来的な対応を考えると短期的には車両の3両化、長期的にはモノレールと地域を結ぶフィーダー交通や南北縦貫鉄道の整備も必要になる。そのためには県や市町村の努力、連携が重要になる」として、延伸整備は中長期の取り組みの過程だと指摘する。

■果たすべき役割

 首里駅以降の延長によって新たな起点・終点となった「てだこ浦西駅」にはパークアンドライド駐車場を新設したほか、西日本高速道路が24年度の完成を目指し、同駅に結節する幸地インターチェンジ(IC)の整備を進めている。

 モノレールから自動車や高速バスへの乗り換え・乗り継ぎが円滑になるように交通結節のインフラを整備することで、那覇市内への自動車の乗り入れを少なくしていく交通政策だ。

 第三セクターの沖縄都市モノレール社には、公共交通として政策的な役割が求められる一方で、延長整備に要した負債の返済や今後の3両化に必要な設備投資資金を確保するため、より一層の効率的な経営力も求められる。

 沿線化に伴いモノレール社の株主に加わった浦添市の松本哲治市長は「モノレール社が県全体の交通体系の中で果たすべき役割を認識し、あふれる自動車台数の抑制に貢献できれば、売り上げだけで計れない効果がある」と「県民の足」として認知が広がることに期待を込めた。
 (外間愛也)