【記者解説】中距離弾道ミサイル、米が沖縄配備を当然視するわけとは


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 米国による沖縄・日本本土への中距離弾道ミサイル配備計画は、アジア太平洋地域で中国包囲網を強化する狙いがある。INF廃棄条約に縛られた米ロをよそ目に、中国は中距離弾道ミサイルを中心に核戦力を増強した。米国はアジアの同盟国の中でも日本は配備への同意を得やすいとみている節があり、特に基地が集中する沖縄は当然視しているようだ。同条約破棄以降、世界の安全保障環境が大きく悪化する見通しの中、在沖米軍基地の役割は再定義される可能性が高まっている。

 貿易戦争に加え、軍拡競争による米中間の対立が深まれば、米国は在沖米軍基地の役割を一層重視するとみられる。新型ミサイルを地上配備することで中国を常にけん制するほか、尖閣諸島など島しょでの武力衝突に備えるという役割だ。

 しかし配備先の地元や世論の反発が予想され、日本政府が配備に同意するかは不透明な要素が残る。ただ、中国や北朝鮮脅威論を強調し防衛力強化の名目で配備を正当化する動きが出る可能性もある。核弾頭搭載可能な新型ミサイルの配備は核兵器を持たず造らず持ち込ませずという、日本の国是である非核三原則との整合性も問われる。

 配備の是非は、北方領土問題や日ロ平和条約締結の行方にも重大な影響を及ぼす。ロシアは配備を「新たな脅威」と位置付け危機感を強めているからだ。南方の沖縄であっても、1基でも配備されればロシア側は交渉を白紙に戻す構えだ。ロシアは対米従属性が強いと言われてきた現在の日米安保体制下では、配備拒否の可能性は低いとみて、新しい防衛システム構築を急ぐ考えだ。

 外務省が示した「日米安保条約上の事前協議について」では「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持ち込み並びにそれらの基地建設」は「装備についての重要な変更」に当たるとしている。新型ミサイルはそのミサイルに該当する。事前協議で日本が毅然とした態度で交渉できるか、日米関係が改めて問われる。

 一方、配備されれば壊滅的なミサイル戦争に巻き込まれる恐れがある沖縄は、基地問題に対する新たな戦術・戦略を迫られる。辺野古新基地には弾薬庫や軍港も新たに整備されるため、完成すれば地上型の新型ミサイル配備だけでなく、短・中距離ミサイルを搭載した艦船や潜水艦が頻繁に寄港する恐れもある。

 新型ミサイル基地として在沖米軍基地の重要性が再定義されるのを見越し、在沖海兵隊削減論・不要論とは別の位相の負担軽減論を早急に築く必要がある。
 (新垣毅)