早くも21世紀枠に推す声も 驚異の粘りを見せた八重山農林 12人の戦い方は?


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沖縄尚学―八重山農林 9回二死満塁、9番・宮良太海の内野ゴロ悪送球の間に同点の本塁を踏む八重山農林の二走・上田忠幸(右)(田中芳撮影)

 選手12人で、初めて県大会決勝に駒を進めた八重山農林の勢いは本物だった。5点を追う九回表、2死二塁から、驚異の追い上げが幕を開けた。

 打席にはここまで無安打の4番砂川将吾。「4番の意地を見せてこい」。新里和久監督から背中を押され「強気にいく」と決めた主砲が、3球目の外側直球を振り抜き、右前打で1点を返す。あと4点。「点差はまだあったけど、次の打者を信じていた」

 さらに四球と安打で満塁とし、7番上田忠幸に打順が回る。「今大会調子が悪く、不安だった」というが、打席に入る前に「セーフティーバントをやってこい」と仲間に冗談を言われ、いい具合に力が抜けた。球種やコースは「覚えてない」と無我夢中で振った打球は右前に落ち、2点を追加。その後、相手の失策から土壇場で追い付いた。

 延長で惜敗したが、新里監督は「本当によく頑張った。つなぐ、打つ、見極めるという意識で、よく追い付いた」と選手の粘りに目を見張る。次はさらに大きな舞台、初の九州大会。「(試合を通して)好機で1本が出なかった。もっと技術を上げていく」と貪欲に成長を求める大浜圭人主将は「多くの壁を倒し、甲子園に行きたい」と目標を高みに据えた。

(長嶺真輝)

◇離島地域で準V 少数精鋭に期待

 県秋季大会で初めて決勝に進出し、部員12人で準優勝に輝いた八重山農林。来春の選抜大会の出場校を選考する際の重要な資料となる九州大会での上位進出が期待されるが、関係者からは「選抜の21世紀枠候補での推薦を」との声も上がる。農林高校の県大会決勝進出は春季、選手権、秋季を通じて1963年秋の中部農林以来56年ぶりの偉業だ。

 21世紀枠は全国の球児に夢を与えるとの趣旨で2001年に設けられた。この年、沖縄からは前年の秋季九州大会でベスト8に入った宜野座が選ばれた。

 選考は、各都道府県の秋季大会ベスト8進出、部員不足や自然災害など困難な条件の克服、プレー態度などの項目をクリアした学校が対象となる。都道府県の高野連が推薦状を提出し、審議される。

 準々、準決勝と逆転で制する粘り強さや少数精鋭での快進撃、石垣市という離島地域にあることなどから高野連関係者から「21世紀枠で推薦すれば有力では」との声が出ている。


 高校野球の第69回県秋季大会は5日、沖縄市のコザしんきんスタジアムで決勝を行い、沖縄尚学が8―7で八重山農林に勝利し、2年ぶり8度目の優勝を飾った。