経済

イケているかが基準 アンテナ張り時代読む「褒められるためじゃない」 松田周さん(SMbrand社長)〈下〉<ウチナー未来人(びと)>2 第1部 躍動する新時代

 上京して4年が過ぎた2007年。23歳だった松田周さん(32)=嘉手納町出身=は会社をつくることを決意した。ある程度の資金がたまっていたことに加え、「30代で起業する人はたくさんいる。20代前半はあまりいないからかっこいい」と思ったからだ。

 アパレルに進出するに当たり、同業の社長何人かに話を聞きに行った。そこで感じたのは「感覚が昭和だ。これでは若い人の心に刺さらない」ということだった。時代は常に変化し、消費者の心も変わりやすい。「~であるべきだ」「~しなければならない」という型にはまった考え方では、その変化に柔軟に対応できない気がした。


創業8年で年商120億円まで会社を成長させたSMbrandの松田周社長=東京都目黒区の同社

 若い人向けの事業を展開するなら、若い人たちのことをよく知っている自分たちで一からつくり上げた方が早いと再確認し、一緒に働いていた仲間たちと起業した。オンラインショップで「Rady(レディ)」を開店。レディは、ギャル雑誌で活躍していたモデル武藤静香さん(28)がデザイナーを務めたこともあり、当初から話題を集めた。その後も四つのブランドを展開した。

 幼いころからおしゃれは好きだが、ファッションについて専門的に学んだわけではない。経営もそうだ。ビジネスセミナーに通ったこともない。理論や誰かの成功談よりも自分が見たこと感じたことを重んじる。

 レディは国内に3店舗しかない。「たくさん店舗があれば簡単に欲しい服が手に入ってしまう。レア感がなくなる」からだ。そう考える原体験は、幼いころ、近所のおもちゃ屋さんに並んで手に入れた携帯液晶ペットゲーム「たまごっち」。買えないかもしれない―という不安と、買えたときのうれしかった気持ち。「なかなか手に入らないともっと欲しくなる」ことを体感した。

 今も街で行列があれば並んでみる。ベストセラー小説はたいてい読んでいる。何が人々の心をつかんでいるのか時代の空気を読むアンテナを張り、感覚を研ぎ澄ましている。

 「ダサい」と思って飛び出した沖縄だが今は月に1度は帰る。何もせずに海を眺め、心を落ち着ける。10代のころは気が付かなかった沖縄の良さが今は分かる。

 「お金をもうけることが目的ではない。日本一のブランドのうちに手を引きたい。そして次は全く違うことをしてみたい」と将来を描く。「チャラチャラ、フラフラしてと、周りから見ると俺はばかだと思う。だけど褒められるために生きてるんじゃないでしょ」と話す32歳の社長は「いけているか」「自分たちが夢中になれるか」を基準に歩んでいく。

(玉城江梨子)