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観光好調で新規参入相次ぎ競争激化 人手不足に拍車、時給1500円も店も 苦悩する石垣島の飲食業の今は… 〈熱島・沖縄経済 第2部〉11


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
時給千円の求人広告が張り出される石垣市の商店街=8月31日、石垣市

 観光が好調な石垣島では増える観光客の需要を狙った新規参入が相次ぎ、宿泊業、飲食業など各店舗間で価格競争が激しくなっている。県内全域で人手不足が深刻化しているが、中学・高校卒業後に島を出て行く人が多い離島は若者の確保が一段と厳しい。過当競争で商品やサービスの価格を上げられないことに加え、人件費の上昇が経営を圧迫。客は増えても利益は上がらず、忙しさだけが増していく「豊作貧乏」の嘆きが聞かれる。

 石垣市のすし、割烹料理の老舗「三寿司(みすし)」は、地元客や観光客に人気で連日満席だが、新石垣空港の開港時に店の規模を48席から18席に縮小した。人手不足になることを見越していたためだ。

 オーナーの大野等さんは「店の規模を大きいままにすればその分客は入ってくるが、人員を回せなくなる」と語る。規模を縮小して空いた分のスペースは、焼き肉店とおでん屋に切り替えて身内で経営していた。しかし、結局は人手が足りなくなり、おでん屋は昨年閉めたという。

 石垣島では時給千円前後で募集している事業所が多く、時給1500円で雇う飲食店もあるという。三寿司では時給850~950円。求人を出しても来ないため、知り合いからの紹介で雇っている。

 参入障壁が低い飲食業界は島内外から新規出店が激しく、集客でも人手確保でも業者同士で体力を削り合う。大野さんは「本当はもう少し単価を上げたいけど、上げたら客が来なくなる」と複雑な表情を浮かべる。

 八重山地域でホテル業やリネンサービスなどを手掛ける美ら花グループ(宮平康弘代表)も人手の確保に苦戦気味だ。同グループの島尻吉勝常務は「本当は新卒や主婦などを採用したいが、島に若者がおらず、主婦層もなかなか時間帯がマッチングしない」と話す。

 同グループが石垣市で運営するホテルミヤヒラでは、夏場は客室清掃が間に合わないため、昨年から期間限定で時給千円の日払いのアルバイトを雇っている。日払いにすることで出勤日の調整をしやすくし、一定数の応募を確保している。海外で企業説明会を積極的に開き、人材確保に注力している。

 グループ企業の太洋リネンサプライ(石垣市)は、石垣市内ホテルの約7割のリネン製品の洗濯仕上げや納品を手掛けている。来年は取引する「フサキリゾートヴィレッジ ビーチ&ガーデン」「ANAインターコンチネンタル石垣リゾート」が増設で客室数が増える予定で、島尻常務は「今の従業員数だと、来年から残業が1~2時間増えるだろう」と操業の維持に頭を抱える。八重山地域には宿泊施設の整備や増設の計画が持ち上がるが「新しい仕事が来ても、既存の客に迷惑をかけてしまうので受け入れられない」と語り、受注拡大の機会を逃すことにもあきらめ顔を浮かべる。
 (「熱島・沖縄経済」取材班・中村優希)