国内外へ販路拡大 需要を読み、技術生かせ 〈復帰半世紀へ・展望沖縄の姿〉6


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
世界初の小型海水淡水化装置を開発したワイズグローバルビジョン。世界の市場に販路拡大している=11日、うるま市勝連南風原

 2012年に策定された沖縄21世紀ビジョン基本計画には「強くしなやかな自立型経済の構築」が掲げられている。第3、第4のリーディング産業創出を目標にこれまで産業振興が図られてきた。18年工業統計調査で製造品出荷額、付加価値額ともに全国最下位など残された課題は多いが、県や内閣府からの支援を足掛かりに製品開発や国内外への販路拡大に成功した企業も生まれ始めている。

 うるま市の国際物流拠点産業集積地域に立地するワイズグローバルビジョン。12年の設立で一括交付金を活用した県産業振興公社の「県産工業製品海外販路開拓事業」や「戦略的製品開発支援事業」などを活用し、小型海水淡水化装置を開発した。

 国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)の一つ「すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」の理念にも賛同している。18年6月には国連のフォーラムにも参加。水供給が不安定な島嶼(とうしょ)諸国を中心に11カ国に装置を出荷し、社会貢献にも取り組みながら世界に視野を向けている。

 18年からは県産業振興公社や県内4金融機関でつくる「沖縄ものづくり振興ファンド有限責任事業組合」の出資を受け、製造基盤の拡充を図る。技術者でもある大嶺光雄会長は「最初の10年は失敗ばかりだったが、支援を受けてチャンスをつかむことができた。沖縄から世界で勝負していきたい」と前を見据える。

 利用用途が少なく、規格が異なる空き瓶に目を向け、リサイクル資材を新たな産業に引き上げようとする企業もある。八重瀬町新城に工場を構えるトリム(坪井巖社長)だ。異なる種類の酒瓶などを粉砕処理し、加熱、発泡させると保水と透水性を合わせ持つ人工軽石ができあがる。混ぜ合わせる資材の比率を変えることで比重や吸水率などを変え、多様な用途に合わせた人工軽石を製造することができる。

 1973年の創業時から試行錯誤を重ね、現在は全国組織であるガラス発泡資材事業協同組合を立ち上げた。国外では台湾にもプラントを持つ。2015年にはものづくりファンドから出資を受けるなどしてきた。今年7月には、廃ガラス瓶を再利用した同社の製品「スーパーソル」がJIS(日本工業規格)の認定を受けた。

 日本産産業製品に関する規格や測定法などを定めた国家規格であるJISの認定を受けるのは県内企業で初めて。経済産業省の新市場創造型標準化制度を活用しての認定は国内初となる。坪井社長はJIS認定を契機に「47都道府県でのプラント建設を目指す。沖縄から全国へと広げていきたい」と意気込んでいる。

 県産業振興公社の嘉数晃産業振興部長は「県内中小企業には技術力を持つ企業は多い」と強調した上で、「研究開発した製品が実際に市場に受け入れられるかが課題の一つ。研究開発でできた成果や製品を市場のニーズに合わせて、カスタマイズできるかが重要だ」と課題を指摘した。

(当間詩朗)