継続的訴え鍵 知事、辺野古見直し条項要求 「日米協議へ沖縄」に議員反応も


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ブラックバーン上院議員(左)に辺野古新基地建設に反対する沖縄の民意などについて説明する玉城デニー知事=17日、ワシントン市内(沖縄県提供)

 訪米中の玉城デニー知事は17日、2020会計年度(2019年10月~20年9月)の国防予算の大枠を決める国防権限法案の一本化に向け協議を続ける上下両院協議会のメンバー4人と会談した。委員らに「沖縄の民意と現状を直接届ける」(玉城知事)という今回の訪米目的を果たした。ただ、17日に面談できたのは43人でつくる両院協議会のメンバーの一部で、今後は議員本人だけでなく補佐官などに対して、玉城知事や県ワシントン事務所の職員が継続的に沖縄の民意や現状を訴えることができるかが基地問題解決に向けた一つの鍵となりそうだ。

 両院協議会は上院軍事委員会から21人(共和党12人、民主党8人、無所属1人)、下院軍事委員会から32人(民主党19人、共和党13人)の計53人で構成する。そのうち、玉城知事が面談した共和党のマーシャ・ブラックバーン上院議員はトランプ大統領の側近として知られる党の実力者だ。

 開会中の米議会は現在、トランプ大統領がウクライナ政府に対して政敵への捜査を依頼したことへの弾劾調査などで駆け引きが続いており、そうした中でブラックバーン氏と会談できた意義は大きい。

 県民投票で示された辺野古新基地建設反対の民意を無視して埋め立て工事を進めることが日米同盟の足元を揺るがしかねないという明確なメッセージをブラックバーン氏を「窓口」とし、トランプ大統領に沖縄の声を届けることができる可能性も出てきた。

 玉城知事は各議員との会談で「沖縄も責任ある当事者だ。日米協議の枠組みにぜひ沖縄を入れ、安全保障のために受け入れ可能な米軍施設を議論していきたいと考えている」と発言。日本政府に対して要求している「日米特別行動委員会(SACO、サコ)」に沖縄を加えた「SACWO(サコワ)」の構想を説明すると「確かにその通りだ」との反応があったという。

 一方、上院のインホフ軍事委員長、下院のスミス軍事委員長は調整などで身動きが取れないとの理由で本人にも補佐官にも会えなかった。インホフ氏の事務所は本紙の取材に対し「日程が詰まっており、全く時間が取れなかった」と説明した。

 上下両院の軍事委員会は国防権限法案を通過させる期限となる11月21日に向け、重要課題である国防総省の宇宙軍設置や、トランプ大統領の公約であるメキシコとの国境の壁設置に関する予算の審議などで詰めの作業を急ぐ。期限内の成立を危ぶむ声も米メディアなどで出ており、在沖米軍の分散配備の再調査を義務付ける条項については重要課題の審議が終わった段階で話し合われる見通しだ。

 日本政府が米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事を進めていることから「日本の国内問題だ」と突き放す議員もいたが、玉城知事は「米国も当事者だと説明すると理解を示す人もいた。来年以降も働き掛けを続けていける感触はあった」と手応えを示す。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設に固執する日米両政府の限られた外交チャンネルに風穴を開けようとする玉城県政の本格的な取り組みは始まったばかりだが、議論が好まれる政治風土で玉城知事が掲げる「対話」を続けていく環境づくりが求められる。
 (松堂秀樹)