変化恐れず、達成度検証を 高橋進・内閣府沖縄振興審議会会長 次期沖縄振計に必要なことは…


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2021年度末で期限切れを迎える沖縄振興計画。国と県は現在、現行計画の沖縄21世紀ビジョン基本計画の実施状況の総点検作業を実施している。その検証に必要な視点や今後の沖縄振興の展望などを、内閣府沖縄振興審議会会長を務める高橋進氏(日本総合研究所名誉理事長)に聞いた。

沖縄振興の展望について語る高橋進氏=17日、ロワジールホテル那覇

―今後の沖縄振興の必要性をどう見るか。

 「沖縄の自立的な経済発展につなげていくという観点からすると、まだまだやらなくてはいけないことはある。今の変化もとらえながらどこまで芽が出てきたのか。芽が出ていなければ政策を変えていかなければいけない。芽が出てきたところがあればより育てていく、そのために今の計画をちゃんと点検することだ」

 「小さな目標を達成したかどうかが常に話題になって評価される。しかし、真ん中に置いた目標が達成されたのか、トータルの評価をしていくことが重要だ。細かい指標の達成度合いだけを測れば、自動的に計画の成果が測れるものでは決してない。指標だけではなく、外部要因で成果が上がったのか、自律的要因で上がったのか、見極めていくことも重要だ」

 「IT産業で言えば、沖縄の担当している部分の付加価値がどれだけ上がっているか。下請けとか末端の作業ばかりしていれば付加価値は上がっていかない。指標では達成されているかもしれないが、IT産業を付加価値産業として育てていくという政策目標でくくり直してみた時には、必ずしも達成とは言えない。その検証が大事だ」

―新しい沖縄振興計画に大切な視点は。

 「これからの10年、15年はIT化が急速に進んで世界の構造が大きく変わっていく。そういう中で日本の立ち位置を考えないといけないので、当然、沖縄振興計画もそういうことを考えないといけない。10年計画を作ったとしても、途中で相当変えていかなければいけない可能性もある。変化を柔軟に取り込めるような形にすることが重要だ」

 「本当に沖縄の発展につながっているのかを常にフィードバックしながら、必要なら変えていくことを恐れてはいけない。行政は税金を使っているから失敗してはいけない意識が強いけれど、これからはそれだけでは駄目で、行き詰まったら変えてやっていく」

―モデルにすべき地域はあるか。沖縄で将来発展性のある産業をどう見るか。

 「製造業を伸ばすことで所得格差を埋めるという発想は、もうやめたほうがいい。所得格差を縮めていくという観点に立った時に、本土の製造業を目標にしないほうがいい」

 「観光を一つの大きな起点にし、中継基地としての利点を生かしながら製造業・非製造業も一緒に育てていくというような、そこの連関を作るかというところを考えていくことではないか。モデルはないかもしれない。新しいモデルを作っていけばいい」

(聞き手 中村万里子)