平和願い組踊「対馬丸」 北谷の小中生、「悲劇」熱演


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組踊「対馬丸」の一場面=13日、北谷町のちゃたんニライセンター

 【北谷】北谷町内の小中学生が演じる組踊「対馬丸」(主催・町自主文化事業実行委員会)が13日、ちゃたんにらいセンターで上演された。今年で対馬丸遭難から75年、組踊上演300年の節目を迎えたことから、対馬丸の事件を語り継ぎ反戦を呼び掛けようと北谷町が企画した。昼夜2回の公演はいずれも満席に。夢半ばで命尽きた疎開児童や、戦火をくぐり抜けるも過酷な現実を突きつけられた人々の心情を丁寧にくみ取った子どもたちの熱演に、涙を流す観客の姿も多数見受けられた。

 作品は対馬丸が米潜水艦の攻撃に遭った1944年8月22日から、那覇の約9割が焼けた「10・10空襲」までの約2カ月を描いた。対馬丸を題材にした組踊は7年前にも上演されたが、今回は疎開に向かう児童の様子をより詳細に描いた。

 昼公演では原作の大城立裕さん(94)も駆け付け、舞台を見守った。大城さんは「役者一人一人、演技に気持ちが込められ、素晴らしかった。舞台を通して平和へのメッセージがひしひしと伝わってきた」と述べ、子どもたちの熱演をたたえた。

公演終了後、大城立裕さん(前列中央)と笑顔で記念撮影する主演の子どもたち

 疎開する児童らの姿と、自身の戦争体験を重ね合わせる来場者も少なくなかった。戦争当時15、16歳だった定岡ユキさん(89)=北谷町=は、主人公の玉城武志が遭難を逃れ一命をとりとめるも、空襲の犠牲となる最後の場面が特に印象深かったという。

 「一人残された武志の母親を思うと胸が痛む。戦後、同じような思いをした人が沖縄には大勢いる」と述べ、不戦への誓いを新たにした。