【名護】琉球古典音楽野村流の名人・幸地亀千代さんの映像が、このほど新たに見つかった。映像は、名護市我部祖河の上原仁吉さんが1969年5月に那覇料亭で行われた野村流の春季総会を撮影したもので、後に人間国宝になった島袋正雄さんをはじめ、野村流の隆盛に関わった先達(せんだつ)の姿が確認できる。上映に立ち会った野村流音楽協会の長浜眞勇会長は「幸地先生の動画は初めて見る。当時の野村流の重鎮もおり、貴重なものだ」と話した。
野村流の春季総会の映像は上原さんが、父の良善さんの師範免状授与式に際して、撮影した。映像には、会場に入る幸地さんや照屋林山さんと思われる人物ら野村流の重鎮や、幸地さんと親しげに話す島袋さんの姿が映っている。
会場いっぱいに集まった会員が三線や箏を演奏する姿や、免状授与後自宅に戻り宴会をする上原家の様子からは、当時の人々の琉球古典芸能を誇りに思う気持ちがうかがい知れる。幸地さんは同年9月に死去した。
上原さんは、羽地村(現在の名護市)役場に就職し、趣味で映像撮影を始めた。ベータや8ミリビデオなど映像技術の進化を体験しながら、名護市内のイベントを中心に数多くの映像を撮影してきたという。
自宅には第1回と思われる「少年の船」の映像や、田井等親川の村踊り準備の様子など、復帰前後の貴重な映像が多数残されている。
上原さんは「当時はビデオカメラを持っている人は少なく、師範免許授与式では幸地さんから『前にどうぞ』と案内された。映像は、市に寄付したいと考えている」話した。