日米関係修復、米も協力 軍事情報の共有、非常に重要 米シンクタンク上級研究員 パトリック・クローニン氏


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 北朝鮮のミサイル発射などで東アジアの安全保障環境が不安定さを増す中、戦時中の日本による徴用工への補償などを巡り日韓関係が悪化している。米政府は同盟国に思いやり予算の増額を求めるなど、日米韓の同盟関係にも変化の兆しが見える。トランプ政権への政策提言などで影響力を増している米シンクタンク「ハドソン研究所」のパトリック・クローニン上級研究員に沖縄や日本を取り巻く安全保障環境の今後などについて聞いた。

―日韓関係が悪化しているが、米政府の対応は。

 「納得しない人もいるだろうが、私はこれまで自身の観点から旧日本帝国の行いについて真実を伝えてきた。戦後、日本が東アジア地域の平和と安全に貢献してきた役割は非常に大きい」

―徴用工や従軍慰安婦の強制性や南京大虐殺などを否定する動きがある。

 「過ちを含めて過去に向き合うことで、より知性的に、より強くなれる。特定の歴史について言及するつもりはないが、他国が過去をどう見ているかということから学べば状況にうまく対処できる」

―韓国が軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄した。

 「東京とソウルは北朝鮮の脅威にさらされており、双方の情報共有は非常に重要だ。日韓両国の関係悪化を、北朝鮮など周辺国が勢力拡大の好機と捉えないよう、米政府は関係修復に協力している。日本は2020年の東京五輪の準備をしているが、不測の事態に備えるためにも日米韓の情報共有は迅速であるべきだ」

―思いやり予算の増額要求はあり得るか。

 「日本が負担しているのは、巨大で高い能力を有する米軍を維持するために米政府が費やしている費用の一部にすぎない。米国は強固な同盟関係を誇りに思っているが、複雑化する安全保障環境の中、米軍の前方展開などを強化して同盟を強化するために同盟国にはより責任が求められる」

―沖縄や日本を取り巻く安全保障環境の今後は。

 「独裁国家の台頭が顕著になっている。中国やロシア、北朝鮮、イランなどは、力を行使することによってこれまでと違う安全保障のルールを作ろうとしている。中国は南シナ海だけでなく東シナ海でもそうした行動に出ている。北朝鮮は核弾頭を搭載したミサイル開発や実験を繰り返し、ロシアはソ連時代のような対応をウクライナに対して行っている。第2次世界大戦後、日米や他の民主主義国家が構築してきた安全保障上のルールを、積極的かつ直接的な攻撃によって変えようとする“修正主義”が勢いを増している」

 「安倍政権は国際的なルールを守るため努力してきたが、これからのデジタル時代のサイバー攻撃やフェイク・ニュースなどへの対策を講じることがさらに重要になる。重要な情報や技術が、現在の安全保障体制を作り替えようとする国々に渡らないよう、日本はより主導的役割を担うべきだ」

(聞き手 松堂秀樹)